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「おぉ…遂に来た…」
雄英高校の門の前に着き、校舎を見上げる。入試の時に来た時も思ったけど、雄英は色々と無駄に大きい。
小学三年生の時に地方に引っ越したけど、この度雄英に入るために親元を離れてまたこの地に戻ってきた。一人暮らしに対して色々と不安はあるけれど、この辺りには昔何度か来た事もあって懐かしくもある。だから今朝はあんな夢を見たのかもしれないな。
私と同じ新入生だろう人達が、何してんだこいつ、みたいな目で横を通り過ぎていく。途端に恥ずかしくなり、俯きながら少し早歩きで門を潜った。
ふと前を見るとなんだか見覚えのある後頭部。いやでも最後に見たのは小学三年生だから似てるなぁ…って程度なんだけど…
「かっちゃん…?」
「あ゛ぁ!?」
そこまで大きな声を出していないのに聞こえたらしい。なんて地獄耳。しかしそのドスのきいた声を出しながら振り返った顔を見たら似てるどころじゃなかった。本人だ!
「ホントにかっちゃんだ!わ!わー!かっちゃんも雄英なんだ!久し振り!元気だった?」
「………」
「かっちゃん絶対ヒーロー科でしょ!私普通科なんだー!」
「………」
「あっ、今度時間あったら遊ぼうよ!お茶するだけでも良いしさ!」
「……千晴?」
「あーもうホント久し振り!かっちゃん会いたかったよー!」
「…こんのクソ女!!!」
「えええええ」
久し振りに会ったと言うのに開口一番クソ女とか相変わらず酷い男だ!確かにテンション上がり過ぎてウザい絡み方してたかもしれないけど、その言い草はあんまりだ。いやでもそれがかっちゃんらしいと言えばらしい。
「かっちゃん変わってないねえ」
「変わったわ!つかてめェ俺に黙っていなくなったくせによく抜け抜けと俺の前に出てこれたなあ…?」
「へ?どゆこと?」
「ぬかせ!退院したと思ったらいきなり引越しとかなめてんのか!」
「えぇー…だって親の都合じゃ仕方ないじゃん」
「てめェ…」
親の都合で急遽引越しが決まったのは確かだ。急過ぎてかっちゃんにも他の友達にも何も言わずに転校した。そりゃかっちゃんと離れるのは嫌だったけど、小学生の私に親と離れて生活していくなんて無理だし、反論する余地も無かった。話してしまうと離れ難くなりそうで、皆への挨拶はしなかった。
確かにね、それは悪かったと思う。でも幼馴染って言う事実はいつまで経っても無くなるものではないし、簡単に切れるような仲でもないと思ってる。まぁせめて連絡位はするべきだったんですね。会いたくなって泣きそうだから連絡もしなかったんだけど…うん、ごめん、謝る。謝るからこのブレザーの襟元掴み上げてる手を離してくれないか。
「かっちゃんごめんって。のっぴきならない事情があったんだってば」
「だったら説明してから消えろや!」
「…それもそうか……あっ、ごめんってば!とりあえず人目が気になるので先ずは手を離そうか!」
「チッ!」
手を離すついでに身体を押されて少しよろけてしまった。まぁかっちゃんの暴挙にはそれなりに耐性があるので、特に何も言うまい。でも過ぎ行く人達に変な目で見られるのは居た堪れないので無理です。
未だ親の仇かの如く私を睨んでくるかっちゃんに何て返そうか。相当なお怒りだ。暴挙には慣れていてもこんなに怒られたことはないので対処の仕方がわからない。
「チッ…おい、携帯番号教えろ」
「え?携帯番号?」
「てめェは携帯番号の意味もわかんねえのか!?あ゛ぁ!?」
「わ、わかるよ!えと、書くもの…番号……紙こんなのしか無かったけど、はい」
「遅えんだよこのノロマ!三秒以内に出ろよ、いいな!」
「えっ、無理」
「返事はハイかイエスだろーが…!」
「イエス、ボス!!」
かっちゃんが右手を上げて今にも爆破すんぞオーラかヤバかったので敬礼付きで返事をしたら満足したのか、かっちゃんは鼻を鳴らしながら校舎へと向かっていった。
相変わらずの暴君っぷりだわ。久し振りに会った幼馴染が全く変わってなくて安心したような何と言うか…
再会
(中身は成長してないんだなぁ…)