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「さっきバクゴーに捕まえられてたね」
「んげ、あれ見てたの…恥ずかしい…」

食堂から戻ってきて席に着くと、隣の心操君から思い出したくないことを言われて両手で顔を覆った。

「出来れば記憶から抹消してください…」
「無理だね」

そりゃそうだ…結局あのままの状態で食堂まで連行されたからね。かなりの人に見られてホント恥ずかしかった。食券買う所でやっと解放されたけど、かっちゃんのメンタルまじ鋼。

ご飯中は私がかっちゃんに話し掛けて、かっちゃんは相槌や軽く返してくるだけで何だか一方的な会話だった。昔はもっと話してくれてたのに…いや、話してくれてたと言うか命令されてたと言うか…。キレやすいところは変わってないけれど、大人になったということか。それはそれで少し寂しい気もする。

「ホントに仲良いの?」
「なっ、仲良いよ!」

心操君に不穏なことを言われたが、かっちゃんとは大の仲良しだと胸を張って言える!再会早々胸倉掴まれたり首根っこ掴まれたりしたけれど、かっちゃんにとってはあんなの普通のことだし!

「千晴ちゃんあの人に虐められてるの?」
「違うよ!?」

自分の席に戻ってきたトモちゃんがいきなりそんなことを言うものだから必死にかっちゃんの良いところを説明したけど全然信じてくれなかった。切ない。



△▽△



放課後。そう、放課後だと言うのに私は学校に残り黙々と日誌を書いている。入学早々に日直当番になってしまったからだ。同じく当番だったトモちゃんは用事があるらしく急いでいたので先に帰ってもらった。

今日の帰りは1人か…スーパーで買い物して帰ろう。誰も居ない教室でのんびり日誌を書いていたら大分時間がかかってしまった。そろそろ帰ろう、と身支度をしてから職員室に寄り、先生に日誌を渡して昇降口に向かう。

靴を履き替えていると外から聞き覚えのある声がした。なんとなく外から見えない位置に移動して外の様子を伺うと、かっちゃんと出久君だった。あの二人が一緒にいるなんて珍しい。しかし会話が成り立つのだろうか…ムクリと湧き上がった好奇心により、壁にくっつきつつ私は聞き耳を立てた。

「人から授かった個性なんだ」
「…まだろくに扱えもしなくて…」
「…使わず君に勝とうとした」
「いつかちゃんと自分のモノにして、僕の力で君を超えるよ」

……はん?今出久君なんて言った?人から授かった個性?あれ?出久君って無個性じゃなかったっけ?

昔のことを思い出そうと色々考えてみたが余計に頭が混乱してきた。

「今日…俺はてめェに負けた!」
「クソが!クッソ!!」
「こっから…!いいか!?俺はここで一番になってやる!!」
「俺に勝つなんて二度とねえからな!クソが!!」

かっちゃんが負けた?出久君に?え?え??

未だ混乱したままの私の横を何かが物凄い勢いで通り過ぎていった。何だ!?と何かが向かった先に目を向ければ伝説のヒーロー、オールマイトが居た。おっ、おぉぉー!!生オールマイト!でかい!かっこいい!!!

何やらかっちゃんに用があったようだがあしらわれていた。可哀想。

てか、今はそれどころじゃない。いやオールマイト見れて嬉しいし話したいけどそれどころじゃない。

「出久君!」
「えっ!?え、千晴ちゃん!?何でここに…ももももしかしてさっきの話…!!」
「かっちゃんに勝ったの!?」
「え!?あ、いや…勝った…のかな?」
「すごい!すごい!!」
「あ、ありがとう…それで、その、さっきの話…」
「あぁ、そうだそれ。出久君って無個性じゃなかったっけ?」
「いや!あの!それが!中学の時に奇跡的に個性が発現して…!」
「へえ!そんなことあるんだ!いやぁ〜ホントにおめでとう!」
「あ、あの、この事は他言無用で…」
「え?ダメなの?…なんかよくわからないけどわかった!じゃあ私かっちゃん追いかけなきゃ!じゃあね!」
「あ、うん。バイバイ」

始終焦った顔の出久君に手を振り、オールマイトに会釈をしてから私はかっちゃんの後を追い掛けた。歩くの早いから走らないとな。

駅に向かってしばらく走っているとかっちゃんの姿が見えた。良かった追い付いた!

「かっちゃーん!」
「………」
「ちょ、待ってってば!」
「……んだよ」
「うち寄ってかない?」
「誰が寄るか死ねカス」
「えー、少し位いいじゃ、」
「うっせえんだよ!俺に触んな!」

言うと同時にかっちゃんに触れていた手を払い除けられ、かっちゃんはそのまま私に目もくれず歩いていってしまった。

私はかっちゃんに拒絶されたことに呆然とし、かっちゃんが去っていった方向をしばらく眺めていた。









初めての拒絶

(あ、あれ?え?)




 

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