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A組が敵に襲撃され、翌日は臨時休校になった。そして休み明けの今日、私は自分の教室に行かずにA組に来ている。

そう、私は昨日とんでもないことに気が付いた。あれっ?私個性使ってなかった?と。

出久君に申し訳なくて思わず個性使ってた。お医者さんから個性使用を止められているだけなら、ちょっと使おうが別にいっか、となるのだけど、問題はかっちゃんだ。昔かっちゃんと約束した。個性は使うなと言われた。それを私は破った。

それに気付いた瞬間の私の焦り様といったら、きっと誰かが見てたら心配になるレベルの焦り様だったと思う。

約束を破ってしまった事をかっちゃんに隠し通せる気がしないので正直に白状するつもりだけど、使った相手が誰かというのは絶対に知られたらいけない。しかも出久君とバレたら私も出久君もきっとただじゃ済まない。

出久君は私の個性を知っている。でも使用禁止になっていることは知らないはずだ。だからかっちゃんに白状する前に出久君に念入りに口止めをしておくために、私は今日朝一でA組にやってきた訳だ。

A組の扉を少し開け、その隙間から中を覗く。まだ早い時間とあって人数は少ないが、何人か居る。皆さんお早い。かっちゃんはー…いない。よし。出久君はー……

「あら、あなた確か爆豪ちゃんの」
「ヒェイ!」

いきなり後ろから肩を叩かれ、思い切り変な声が出た。後ろから誰か来ること考えてなかった。バカか。

「一昨日は何だか辛そうだったけど大丈夫?」
「あ、うん!その節は情けない姿をお見せしてすみませんでした…」
「大丈夫なら良いの」

ケロ、と笑いながら言われてキュンとした。何だこの子可愛い。

「それにしても今日はどうしたの?」
「あっ、あの、出久…緑谷君ってもう来てる?」
「緑谷ちゃんなら…あぁ、居るわよ」

扉を開け、周りの人に挨拶も忘れずに出久君を探してくれる目の前の女の子が天使に見えた。私の体調を気にしてくれて、しかも要件を聞いて助けてくれるとかマジで天使か。

感動しつつも女の子が指差す方に顔を向ければ、出久君は廊下側の席でいつぞやの眼鏡君と話をしていた。そりゃ見えないわ。

女の子にお礼を言い、出久君の元へ行く。あの女の子とお近付きになりたかったけど今はそれよりも優先すべき事があるのです…!

「出久君!」
「え、千晴ちゃん?どうしたの?」

かっちゃんも居ないのに何でA組に?とでも言いたげな顔で見てくる出久君。あながち間違っちゃいないけど、さすがに昔程かっちゃんにべったりではないよ!

「ちょっと出久君にお願いというか…」
「お願い?…あ!そうだ!そう言えば僕あの時お礼言えてなかった!」
「お礼?」
「保健室で僕に個性つか「ああああああ!」

お願いする前に思い切り地雷を踏んできた出久君にビックリして、大声を上げつつ両手で出久君の口を封じた。か、かっちゃんが居なくて良かった。これでかっちゃんが居たら絶対に大惨事になってる。

「んんん!?」
「それぜっっったいにかっちゃんが居る時に言わないで!!」
「んんんんん!?」
「あのね、私本当は個性使っちゃいけないんだけど、あの時は思わずというか、いや、私が個性使ったのがバレる分には良いんだけど、あの、相手が出久君てバレたら私も出久君も無事じゃ済まないから、」
「キミ、緑谷君が苦しそうだぞ」

口外することの危険性を話していたら、出久君の後ろから眼鏡君が話掛けてきた。眼鏡君の言われたことを不思議に思いながら出久君を見たら、出久君が顔を青くしていた。私が手で口と鼻を塞いでしまっていたらしく、慌てて両手を離した。

「ごめん!」
「っ、だ、大丈夫…えと、それで、かっちゃんには千晴ちゃんが僕に個性使ったことを内緒にしておけばいいの?」
「うん、そう」
「なんかよくわからないけど…うん、わかった」

出久君の了承の言葉を聞き、ホッと一息吐いた。最後まで言っていないのに意味を理解してくれた。話が早くて助かる。しかしあんな状態でもきちんと話を聞いてくれていた出久君すごい。

「でも何で?千晴ちゃんの個性すごいのに」
「やー、その、医者から止められてるもんで」
「えっ、それって、」
「……何でテメェがここにいんだ」

後ろから聞こえてきたドスの利いた声に出久君と私は同時に肩を跳ねさせた。思ったより早い登校だなかっちゃん!さっきの話を聞かれていたら終わりだけど、とにかくゴリ押しで謝る!

「かっちゃんおはよう!」
「朝からうるせェ」
「あのね!この前うっかり個性使ってしまいました!ごめんなさい!!!」
「……あ゛ぁ!?」

120度位の傾斜をつけて思い切り頭を下げた。膝裏の筋がピキンと張って痛かったが、そんな事よりも頭上から聞こえてきた地を這うような低い声の方が怖くて痛みよりそっちが勝った。やばい。爆ギレされそう。
 
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