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「ノート見して」

そう言ってきたのは隣の席の十文字。



泥門高校に入学したての頃のこいつは何処にでも居そうな普通の不良だった。弱い人間をパシりに使ったり、暴力も何のその。その際は黒木、戸叶の二人といつも一緒で、三人揃って学校をサボるなんて当たり前のようだった。

そんなこいつが真面目に学校に来始めたのはいつからだったろうか。朝のHRにきちんと出て、授業もきちんと出て(寝てるけど)、帰りのHRにも出ている。彼が一日中学校に居た事など無かったから、次の日は槍でも降るのではないかと心配したものだ。まァ黒木と戸叶はたまに来ない時もあるが、以前と比べたらやはり学校に来る回数は増えたと思う。

弱い人間を虐める事もしなくなったらしい。パシり常連だった小早川も、今はあの三人と普通に喋っている。

「ノート写したいなら小早川にでも頼めば良いじゃん。私とあんた全然仲良くないし」
「はあ?セナのノート見たって勉強になる訳ねぇだろ。それにお前このクラスで一番成績良いんだろ?」
「そりゃ私のノートが喉から手が出る程欲しいのは解るけど、そんなに言う位なら最初から真面目に授業受けろよ」

そんなかったりー事出来るかなどとほざきやがった十文字にイラッときた。こちとら毎日そんなかったりー事してんだよ!そのかったりー事のお陰で成績優秀なんだよ!その涙の結晶を易々と渡してなるものか!

「絶対見してやんない」
「頼むって。部活のせいで寝ないと体持たねぇんだよ」
「え、部活なんて入ってたのあんた」

意外過ぎる。てっきり帰宅部かと思ってた。文化部…って事は無いだろうな。どれを選んでも似合わな過ぎる。て言うか笑える。運動部か…まァ運動音痴には見えないしそこそこ何でも出来そうだ。バスケ…サッカー…野球…何かピンと来ない。

「何部?」
「アメフト」
「…アメフトって、あのラグビーみたいなやつ?」

これまた意外。かなり激しいスポーツだった。

ん?アメフト部ってアレか、何か怖い先輩が居るとか何とか言う…類は友を呼ぶと言うやつだろうか。私にとっちゃこいつも結構怖いし。て言うか厳つい。

「ラグビーと一緒にすんな」
「え、ボールとか一緒じゃん」
「違ぇ」
「……いや、そんな真顔で言われても私アメフトの事知らないし」

何か睨まれたような気がするけど気にしない。兎に角こいつが不良を辞めたんだと言う事が判った。まァ見た目は厳ついけど、こうやって授業に出て勉強しようとしている姿勢は認めてやろう。仕方無い、ノート貸してやるか。

「はい、今回は特別だかんね」
「悪い、助かる」
「今度何か奢れ」
「あー…今度試合あるから、それ終わってからな」
「何、あんたもしかしてスタメンなの?」

雑魚だとばかり思ってた…余程期待されてんのか。何だ何だ、今日は一気にこいつの株が上がる日だなオイ。

「黒木と戸叶と一緒にラインやってる」
「え、あいつらも部活入ってたのかよ」

何だホント。今日はこいつに驚かされてばっかりだ。いやだってまさかこの三人が部活やってるとは思いもよらないじゃん………て言うかさらりとラインとか言われたけど、何だそれ。

「ラインって何」
「…あァ、お前には解んねぇか」
「…………」

今すっごいカッチーン来た。「お前には解んねぇか」だと…?

「…この私をなめんじゃねェェェ!」
「はあ!?」
「私がアメフトの事を知らないのは興味が無いからだ!でもあんたと話してて俄然興味が湧いたね!あァ湧いたさ!だからあんたに説明されなくても自力で調べてやる!なめんなよ!」
「……………」


















嵐の前の一方的な口喧嘩


















(十文字!ラインが何か解ったよ!)
(お、おう、そうか)
(もっとよく知りたいから部活観に行って良い?)
(お、おう、良いんじゃねぇの…)
(場所知らないから連れてってよね!)
(…………)
(じゃ、放課後ね)
(…………)
(…十文字お前何したんだよ)
(……知らね)

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