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「よっし、連れてけ!」
「………はぁ」

こんなに早く放課後にならないかと思った日は無いだろう。十文字と他二人の後ろを歩いて何処に向かっているのかと言うと、以前約束を(一方的に)したアメフト部を見に行くのだ。

私は自分が知らない事を他人は知っているのが好きではない。だから十文字と話している時にアメフトの話をされて、ラインが何か解らないのが嫌だった。しかも知らなかった事に対して十文字に馬鹿にされた気がして余計に腹が立ったのだ。

その日の帰りに本屋に寄り、アメフトのルールブックを買って家で読んでいた。勉強は出来る方だと自負しているし、ルールは直ぐに理解した。元々スポーツは好きだから読んでいてとても面白かった。興味のある事は直ぐ覚えると言うが、全く以てその通りだと思う。

「着いたぜ」
「遊んで良いんだぜコレ」
「自腹だけどな」
「…………」

色々と考えている内に部室に着いたらしい。見た目もさることながら中も負けじとカジノ風だった。…………コレは部室と言えるのだろうか。

部活の準備をするから此処で待ってろと言われ、大人しく座って待っていた。そうしたら話し声が聞こえてきて、いきなり部室のドアが開いた。

「アレ?何で中原さんがこんな所に?」
「あ、小早川」

そう言えば彼もアメフト部だったと今思い出した。役割は確か主務だっただろうか。小早川とはクラスが同じなので何度か話した事がある。小早川と一緒に来た猿の様な男子は違うクラスだが何度か見掛けた事があった。雷門太郎だったか。

二人共私が部室に居る事に驚いていたので、これまでの経緯を説明した。すると二人共部活を見学する事に快く了承してくれた。しかしヒル魔さんにだけは気を付けて!と二人から強く念を押された。噂でも色々と聞いていたので極力近寄りたくはないと来る前から考えていたので異存は無い。

わかった、と返事をしたと同時に十文字達が準備を終えて更衣室から出てきた。今日は基礎練をするらしく、最初から校庭で始めるらしい。小早川達にまた後でと言って私は十文字達の後ろについていった。

「おぉー、すげぇ。ガッションガッション言ってる」

ラインは前衛の要で、後衛陣を守る壁だと本には書いてあった。今彼等がしているタックルみたいなのはきっと相手にタックルする時の練習なのだろう。

言っておくが、私はルールは覚えたが技名や器具の名前までは覚えていない。さすがにそこまで覚えようとは思えなかった。

暫くあの三人がタックルの練習をしているのを校庭の芝生がある所で座って見ていたら、雷門と背の小さい子(小結だっけ?)ともう一人メットにシールドをつけた人が来た。そのせいで誰かは判らないが、雷門と仲良さげに話しているのできっと一年生なのだろう。雷門とシールドの人は紐の梯子みたいなのを持ってきて、ステップを踏み出した。詳しい事は解らないので変な動きをしているようにしか見えない。でも二人の体格はラインの三人に比べて小柄だから、きっと後衛なんだろう。小結はあの三人の方へと向かった。彼もラインなのか。

「そういや小早川が居ない」

いくら主務だからって練習してる時は外に出て皆のサポートとかするだろうに。部室に来てたからてっきり練習にも顔を出すと思っていたのに。

ふと何か変だと思ったら、二年が居ないのだ。あの悪名高い先輩とかなり体格の良い先輩。今日二年は何かあるのか。

「貴女アメフト部の見学者?」
「へ?」

そんな事を考えていたらいきなり後ろから声を掛けられた。いきなり過ぎて変な声が出てしまった。振り返って声を掛けてきた人物を見たら風紀委員の姉崎先輩だった。何故ジャージを着てこんな所に、と言おうとしたところで思い出した。この人アメフト部のマネージャーだ。クラスの男子が嘆いていたのを覚えている。まもりさんがヒル魔の毒牙にやられるー!って。

「もしかして入部希望?」
「あ、いや、違います。只単にアメフトに興味があって」
「そう」

ゆっくり見ていってね、と笑顔で言われて思わず顔が赤くなった。こりゃ男子が騒ぐのも解る。美人過ぎるよこの人。

そう言えば姉崎先輩は小早川と仲が良かった筈だ(以前小早川が言ってた)。何処に行ったか聞いてみよう。さっきから気になって仕方無い。

「あの、小早川何処に行ったんですか」
「セナ?私も探してるんだけど…部室にも居なかったのよね」
「…………」














もしかして














(あのシールドつけてる人…?)


 

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