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「雷門!とその隣の人!」

姉崎先輩が部室に戻ったのを見計らって、私は二人に声を掛けた。あのシールドの人が小早川だとしたら、雷門が知らない訳無いだろう。いつも二人で一緒に居るのを見掛ける。きっと親友と言う仲に違いない。姉崎先輩が知らないのには何か訳があるのだろうから、先輩にバレるような野暮な事はしない。例え私の考えが違ったとしても、念には念をだ。

怪訝な顔で私を見る雷門。シールドの人もきっと同じような顔をしているんだろう。練習の邪魔をされて苛立っているのか、何か用かと雷門が強めに聞いてきた。

でも私が用があるのは雷門の隣で焦っている(様に見える)シールドの人だ。私はシールドの人に指を向けた。するとビクッと反応を示してきた。

「ねぇ、あんた小早川でしょ」

その言葉を聞いて更にビクッとした(今度は雷門も一緒に)。しどろもどろになりながらも否定している二人を見て笑いそうになった(小早川に至っては声まで変えてる)。

「別に言い触らしたりしないから安心してよ。ただ気になっただけだから」
「こんな直ぐ気付いたの中原さんだけだよ」
「だって小早川が居ないとか可笑しいじゃん。何で姉崎先輩気付かないんだろ」
「あ、てめ!まもりさん馬鹿にすんな!」

どうやら雷門は姉崎先輩に憧れている、と言うより恋しているのだろう。何か面倒そうだから適当に流しといた。小早川もさっきから苦笑いしかしていない。

話していたらいきなり二人の顔がまるで怖いものを見た様な顔になった。私では無く私の上の方を見ているので、二人の視線の方へと私も視線を移動させた、けど直ぐに戻した。

「てめぇらサボってんじゃねええええ!」
「ひぃぃいいい!」

ダララララ!と日本にはおよそ似つかわしくない銃声が真後ろから聞こえてきた。小早川と雷門は悲鳴を上げながら練習へと戻っていった。そして私は微動だにしていません。だってまだ私の後ろに居る人が怖くて動けない。て言うか何でこの平和な日本で銃声なんて聞こえんだよ!意味わかんねぇんだけど!

「オイ」
「は、はいい!」

あまりの恐怖に声が裏返った。殺るならいっその事一思いに殺ってくれ!と意気込んで振り返った。そこにはやはりと言うか何と言うか噂に名高いヒル魔先輩でした。

「てめぇ、セナの事誰にも言うんじゃねぇぞ」
「え?」
「もし言ったらどうなるか解ってんだろうなァ?」
「この命に代えても絶対に口外しません!神に誓いますよ!」

て言うか神じゃなくてヒル魔先輩に誓います!と大声で言ったらあの不吉な脅迫手帳はしまってくれた。まさか私の事も何か書かれているのだろうか。いやでも怖くて聞けない。

暫くヒル魔先輩と対峙していたらヒル魔先輩がいきなりニヤァと口の端を上げて脅迫手帳を出した。え、嘘、やっぱり私の事何か書いてあんの!?

「中原千晴、糞チビ達と同じクラス、成績は学年一位…ほほう、最近アメフトに興味があるらしいな」
「ええええ何でそんなの知ってんですか!」

怖いよこの人何でそんな事知ってんだよ!個人情報漏洩も良いとこだよ!一人恐怖に震え上がっていると、更に笑みを深くした…けど何か今度は嫌な笑みでは無く、綺麗な笑みだった(逆に胡散臭い)。

「その無駄な知識をアメフト部に使ってみないかい」
「お断りします」

無駄とか言ってる時点で駄目だろ。それに私はアメフトに興味があるだけでアメフト部には興味が無い。

何より私は何か一つの事に時間を費やしたくない。学生である今が一番自分の時間がある。その時間を私は自分の知識欲を満たす為に使う。社会に出たらそんな悠長な事も出来なくなるだろうからね。

「そんな反抗的な態度をとって良いのか?」
「…脅したってやりませんからね」

脅迫手帳をパラパラと捲りながら私の方を見てくる先輩。な、何言われたって絶対にアメフト部なんて入らないんだから!

と意気込んでいたら先輩は何処からともなくメガホンを出して、それを口に当てた。そして此方を一瞬見てきて、ニヤリと笑ったと思ったら次に息を吸い込み、

「中原千晴の好きな奴はバスケ部二年のさ「喜んでアメフト部に入らせて頂きます!!!」

その時のヒル魔先輩のニヤリと笑った顔は一生忘れないだろう。














噂通りの悪魔













(十文字の馬鹿野郎ォォオ!)
(俺何にもしてねェだろ!)



 

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