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「ホント有り得ない」
「…………」
「何で私がこんな目に合わなきゃいけないんだ」
「…………」
アメフト部へ(強制)入部させられた次の日、私の気分は最悪だった。
昨日の夜はヒル魔先輩からの脅しメールが何通も何通もきたお陰でほとんど寝れなかった。内容は私の淡い恋心に毒を吐いてきたり…その他諸々だ(思い出したくもない)。しかし何であんな事まで知っているのか不思議で仕様がない。
兎に角今は隣の席の十文字に愚痴を吐いている最中である。元はと言えばコイツが元凶のようなものだ。愚痴を言う相手には万々歳だ。しかしいくら愚痴を吐いても何の反応も見せない。因みに十文字は今私のノートを写している。
「…オイコラ聞いてんのか」
「…………」
「…………」
「…………」
「ノート返せ!」
「はぁ!?」
人の話を聞かないような悪い子にはノート見せてあげません!とか言いながらノートを取り上げていたら教科書で頭を殴られた。地味に痛いじゃないかコノヤロー。
「話なら聞いてた」
「嘘だ」
「大体何でアメフト部の俺にそんな話すんだよ」
「いやいや、アメフト部だからこそだろう」
アメフト部じゃなけりゃヒル魔先輩の怖さが解らないだろう。…いや、解るか。特に十文字には絡まずにはいられない。だって十文字が居なけりゃ私はアメフトに興味を持たなかったのだから……多分。
「と言う事で、君には私の愚痴を聞く義務がある」
「意味わかんねぇんだけど」
物凄く嫌な顔をしている十文字。それでも君には義務があるのだ!私の憂さを晴らす為にな…!しかし一応餌としてノートは見せてあげるとしよう(若干の罪悪感はある)。
因みに今の時間は昼休みだ。十文字の近くには黒木や戸叶が居るが、十文字がノートに集中しているため話しかけてはこない。それでも私はそんなの関係ねぇと言わんばかりに先程からグチグチと一方的に話している。話を聞いているのかいないのかよく判らないが、相槌は打っているので良しとしよう。
十文字がノートを写し終わると同時に、私も愚痴を言い終えた。いやはや、かなりスッキリした。
「コレありがとな」
「いやいや、こちらこそ」
「あ、そういやお前さァ」
十文字とお礼を言い合っていたら黒木に話し掛けられた。珍しい。普段こいつから話し掛けてくるなんてほとんど無いのに。
何なんだと考えていたら衝撃的な言葉が黒木から発せられた。
「バスケ部二年の佐藤をす「せぇえええい!!!!!」ぶふぉあ!!」
誰かに全力でラリアットをかましたのはコレが人生で初めてだ。
いやだってコレは誰だってかますだろう!何で黒木まで私の好きな人の事知ってんだよ!
「あ、それ昨日ヒル魔から回ってきたやつか」
「は?」
カカカっと笑いながら何だか聞き捨てならない事を言った戸叶。は?ヒル魔から回ってきた?え?何それ。
私の困惑した様子を見かねてか、十文字が私に説明をしてくれた。
どうやら昨日私が強制入部させられた直後にヒル魔が全部員にメールを送ったらしい。内容は『新マネ中原千晴が辞めるような事を言った場合は、バスケ部二年の佐藤の事を言うべし』………プライバシーの侵害で訴えてやろうか。
ん?ちょっと待て。この内容だと私が佐藤先輩を好きな事はバレてない、な、うん。じゃあさっき黒木は私になんて聞こうとしたんだ?
「…いってぇな!何しやがる!」
「ちょいと、さっきの続き言ってみな」
「ハァアア!?」
「良いから」
「んなの知るかっつの」
「………良いから」
「………トーカーしてんのか?って聞こうとしたんだよ」
『す』+『トーカー』=ストーカー
「せぇえええい!」
「ぐぉぉ!」
まさか一度ならず二度までもラリアットをかます日が来ようとは夢にも思わなかった。何で寄りによってストーカーだよ。まァ確かに若干ストーカーっぽい事はしてるけども!けど!それは恋する乙女なら仕方のない事だと思う。それならまだ好きだとバレた方が良いっつの。
「いいかお前ら、この事絶対に他言すんじゃねぇぞ」
「「「…………」」」
ある意味一番怖い
(ラリアットかますマネージャーってどうよ)
(俺パス)
(俺も)
(ヒル魔のコンチクショウ)