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『ブッ殺す!YEAAAAAH!』
「…………」

泥門高校アメフト部に入部してから早三日。いきなり試合である。いや、試合は良いよ。問題は掛け声だよ。何つー掛け声にしてんだよ。下手したら苦情くるよそれ。

何でも今は全国大会に行く為の関東大会の最中だったらしい。通りでここ最近矢鱈とアメフト部が活動していた訳だ。しかも弱いだろうと思っていたら意外と勝ち進んでいるらしく、今日は三回戦目らしい。相手は毒針スコーピオンズ。名前の通りQBが何か蠍っぽい。

「気色悪」

今日の作戦で口紅を使うと聞いた時はドン引きしたが、中々有効な作戦だ。しかし何も後衛陣まで口紅つけなくても。いや、アレでも一応カモフラージュのつもりなのか。気色悪くてあまり間近では見たくないな。

それにしても、毒針のQBが頭を差しながらアメフトはここで戦う的な事を言っていたからコレはかなり楽しい試合になるのでは!と楽しみにしていたが、期待外れも良いとこだ。雑魚過ぎる。それに頭脳戦でうち(主にヒル魔先輩)に勝とうなど無謀にも程がある。

「泥門デビルバッツの勝ち!」
『うぉおおおお!』

あれよあれよと言う間に試合が終わってしまった。もうそんな時間が経っていたのか。

「8強か…」

周りが騒いでいる中でそうぼんやりと考えていたらフィールドから皆が戻ってきたので慌ててドリンクとタオルを渡す。きちんとお礼を言ってくれる奴や言わない奴(ヒル魔とかヒル魔とか)が居るが、勝ったんだもの。ここは笑顔でおめでとう、だ。

「サンキューな」
「………十文字」

お前ってば良い奴だよな…と某忍者漫画の主人公のような口振りで十文字の肩をポンと叩いた。十文字は怪訝な表情をしていたけど、ヒル魔先輩の後にお礼言ってくれると物凄く良い奴に見えたんだもの。多目に見てくれ。

次の試合が直ぐに始まる為、なるべく急いで片付けをして観客席の方へ移動する(なんとなく姉崎先輩の隣に座ってみた)。そういえば先程の試合であまり疲れなかったのか、皆ピンピンしてる。楽勝ってか。すげぇなオイ。

「次の試合ってどことどこなんですか?」
「あ、説明してなかったね。賊学と巨深よ」
「何て言うか…どっちも見た目通りの名前ですね」

賊学は不良っぽいのばっかりだし、巨深は背の高い奴ばっかり。まァ巨深は背の低い人も居るようだけど。て言うか誰だか知らんがパンツ一丁で歩き回るなよ。隣に居る人も注意しろよ……………ん?なーんか見た事あるような……

「あ!!!」

突然立ち上がり大声を出した私に、周りに居た人達が物凄く驚いていたのが視界に入ってきた。でもそんな事はお構い無しに私は巨深のベンチに向かって走っていった。私の事を呼ぶ声が後ろから聞こえたが、今は無視だ。

さすがに部外者だから巨深のベンチに一番近い観客席から目当ての名前を叫ぶ。

「駿!」
「……千晴?」

筧駿。家が隣同士の幼なじみだ。しかし隣同士と言ってもそれは小学生までの話で、中学に上がると同時に駿はアメリカに留学してしまった。私も中二の時に引っ越しをしてしまったので、駿が日本に帰ってきていた事も全く知らなかったのだ。

本当に久し振りだ。緩む口元が抑えられない。

「何でお前が此処に居るんだ」
「久し振りに会ったのにその言い方はどうなのよ」
「………久し振りだな」
「おう!」

相変わらずクールビューティー気取ってるな。小学生の頃と変わっちゃいない。

そう言えば駿がやってたのもアメフトだったのか。小学生の頃は馬鹿だったしなァ…アメフトとラグビーの区別もついちゃいなかったし。散々駿に馬鹿にされたような気がする。

「で、何でお前が此処に居るんだよ」
「あー…話せば長くなるんだけど…」

簡単に説明するのが難しいので言い倦ねていたら後ろからここ最近で大分聞き慣れた銃声音が聞こえてきた。聞き慣れたと言っても驚かない訳では無いので、ビクッと体を揺らしながら音がした方に振り向けば、そこには見慣れた悪魔がご立腹して座っていた。

「何油売ってんだ!早く戻ってきやがれ糞ガリ勉!!」
「………はぁ」

名残惜しいが戻らないと命に関わりそうなので戻る事にした。駿には試合頑張って、また後で、と言い残して私は皆が居る席に戻っていった。

「……泥門?」

駿がそう言った事など私が知る筈も無い。














つーかでか過ぎ














(どこまで伸びれば気が済むんだあいつ)



 

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