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「何で私が……」
「ご、ごめんね…」
「セナが謝る事じゃないよ」

ヒル魔先輩の差し金により、セナと私は今巨深高校へとスパイに来ている。スパイと言っても隠れてではなく、キミドリスポーツの店員としてアメフト部へスパイクを届ける為に。ヒル魔先輩の情報網は一体どうなっているんだ。怖い。

顔がバレてないと言う事でセナが選ばれ、私は知り合いが居るから、らしい。でも基本的に私は荷物持ちだ。前にも言ったが、友達を売るような腐った精神はしていない。つーか昨日の今日で駿に会うのは気まずい。思い切り啖呵切っちゃったもんなァ…。

校門までモン太と小結が荷物を持つのを手伝ってくれたが、顔がばれてるので中には入ってこなかった。スパイとバレないようにな!と大声で言われた。アホか!

しっかし…歩いていて目に付くのは矢鱈とデカいこの校舎だ。一体何階まであるんだ。

「あ、部室見っけ」
「ホントだ、すいませーん」
「あー人工芝用スパイク!」

部室から出て来たのは巨深にしては小柄な人だった。頭に見事なまでにデッカいたんこぶがある。大丈夫なのか。

とかボンヤリ考えていたら何か騒々しい事になってた。どうやら泥門だとバレたらしい。

「何の真似だ」

セナが慌てて逃げようとしたけど、後ろから駿が来ていて逃げられなかった。セナが何かに驚いていたようだけど、何だったのか。取り敢えず駿にかなりの威圧感があるのでセナを助けたいと思う。気まずいとか言ってる場合じゃねぇ。

「てぃっ!」
「いっ!?」
「わ、わ!」
「事情を聞いてからスパイかどうか判断してもらいたいものだね!」
「千晴!?」

どうやら私が居た事に気付いていなかったようだ。昨日の事を気にしてるのか何なのか、すぐに目を逸らされた。何だよチクショー、逸らしたいのはこっちだっての。

中に入り人工芝用スパイクを渡しながら、今日此処に来た理由(表向き)を説明する。まァ実際にスパイクは本当だし、向こうも疑う理由も無いだろうから信じてくれた。謝罪されたけど良心が痛む。だって本当にスパイだもの。

私が駿の幼なじみと言ったらかなり驚かれた。皆にジロジロ見られて居心地が悪い、と思っていたらいきなりガラッと部室のドアが開かれた。

「お、何だ?あの筧がお茶まで出してる!」
「お邪魔してます」
「千晴ちゃんじゃん」

どうやら駿は泥門、もといアイシールド21が大嫌いらしい。呼び方も偽アイシールドだし。本人が目の前に居ますよー、とはさすがに言えない。

どういった経緯でそんなに毛嫌いしてるのかは知らないけど、本当にアイシールド21が許せないみたいだ。随分と熱血漢になったもんだ。

て言うかちょっと位こっち見ろよな。さっきからセナしか見てない。その辺はまだ子供か。

「門まで送ってってやるよ!」
「あ、ありがとう」
「二人は先行ってて、私駿に用があるから」

水町は良い奴だと感心しつつ、私は断りを入れた。だってこのまま帰ったら苛々しっぱなしだもの。どうにかしてスッキリさせたい。何かを察したのか二人はそそくさと部室を出ていった。他の部員も練習に戻るようだ。今部室には駿と私の二人だけだ。

「昨日の事は「昨日は悪かった」……は?」

謝らないからね、と言おうとしたら遮られてまさかの向こうからの謝罪。多分今の私の顔は物凄いアホ面してるだろう。

この負けず嫌いの塊のような駿が謝るだと…!?

「…………」
「……何だよ」
「いや、熱でもあるのかと思って」
「バカ」
「ぃだっ」

駿のおでこと自分のおでこに手を当てて熱を比べていたら頭を叩かれた。折角心配してやったってのに何だその仕打ちは。

「女の子の頭を叩くとはどういった了見だ!」
「お前のどこが女だ」
「ムッカー!駿だって背だけグングン伸びやがって、中身は餓鬼のまんまじゃねぇか!」
「お前に餓鬼とか言われたくねぇよ」
「なにをう!?」
「なんだよ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……ぶはっ!」
「……ははっ」
「こんにゃろ!」
「ちょ、やめろって!」

こういった遣り取りが懐かしくて、思わず駿の髪の毛をぐしゃぐしゃにしてやった。小さい時もよくやったなァと思い出しながら、また笑った。まァ駿が座ったままだから出来た事なんだけど。

「絶対負けないから」
「それはこっちの台詞だっつの」
「……へへ」














昨日の敵は何とやら














(お茶菓子持って久々に駿の家にでも遊びに行くかな)



 

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