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「…………」

泥門デビルバッツvs巨深ポセイドン

結果は泥門の勝ち。しかし今現在の私の心境はかなーり複雑だ。

私の立場を考えれば、泥門が勝ったのだから喜ぶべきなのだろう。だけど、駿や水町、巨深の人達の姿を見ると素直に喜べない。座り込んだままの人や、涙を流す人。勝つって事は相手は負けるって事だ。どっちも同じ位頑張っていようが、必ずどちらかが勝つのだ。遣る瀬ない。こんな風に思うのは、私が泥門のマネージャーになって日が浅いからなのか。ただのひねくれ者だからか。

皆は勝った事でどんちゃん騒ぎだ。そんな皆を、私はベンチに座って黙って見ていた。一人だけ静かで何か言われるかも、とか考えていたけど、皆騒ぐのに夢中で私なんか眼中にないみたいだ。それはそれで悲しい気もするけどさ…。

「やけに静かだな」
「十文字」
「勝ったのに嬉しくねぇのかよ」
「いや、嬉しいよ、多分」
「多分かよ」

ここは嘘でも嬉しい!と満面の笑みで言うべきだったか。いや、駄目だ、すぐに顔に出る事に定評のある私だ。どうせすぐバレて逆に嫌な思いをさせてしまうだろう。

「向こうが気になんのか」
「…よくお分かりで」
「顔に書いてある」
「マジでか」

あァ、だってすぐ顔に出る事に定評のある私だもの。そりゃ分かるよねぇ…ポーカーフェイスの練習でもするか。

それにしても十文字はよく見てるな。他の人は私なんて目もくれないのに。まァこんだけ騒がしい中一人静かにしてたら誰かしら気付くか。

ぼんやりとそんな事を考えてたら、不意に頭に重さを感じた。どうやら十文字が私の頭に手を置いたらしい。隣に居る十文字の方を見てみたら、ドリンクを飲みながら前を見たままだ。

「…何さ十文字」
「お前は今は泥門のマネージャーだろ」
「え?うん?」
「だったら今は喜んどけ」
「……………」
「色々考えんのはその後でも良いだろ」
「……………」

一瞬何を言われたのか解らなかったけど、頭の中で繰り返してって漸く理解した。何だ、そうか。そうだよな。理解と同時に笑みがこぼれてきたのがわかった。うん、そうだ。それで良いんだ!

立ち上がって十文字の正面に立つ。いきなり立ち上がった私に十文字はビックリしていた。だけど今の私にはそんなの関係無い。

「良い事言うじゃん十文字!」
「なめんなっつの」

何だか青臭い事してんなァとか一瞬頭を過ぎったけど、そんなのも今は関係無い。二人して良い顔で笑ってたと思う。

「ありがと……じゃねぇや。準決勝進出、おめでとう」
「あァ、サンキュー」

そしてまた二人で笑っ「何してんのかなお二人さぁん」

「うぉおお!?」
「二人で青春中ですかぁ?」
「はぁ!?」
「男女が見つめ合った直後二人して笑い合う…そんな青春真っ只中のような事をするなど俺が許さん!」
「何でいっつも十文字ばっかなんだろなァ」
「ちょ、やめろ!」
「……………」

何かよく解らない展開になった。黒木が言う青春十八切符のような事は何一つ無かったと思うが……無かったよね?

三人が色々と揉めてて面倒臭そうだったので違う場所に移動する事にした。取り敢えず皆にドリンク渡さなきゃ。

「お疲れ!そんでもって準決勝進出おめでとう!」
「あ、千晴!ありがとう!」
「ほい、モン太も」
「キャッチMAX!サンキュー千晴!」

二人共凄かった、と言うとセナは照れながらもありがとう、と返してきた。モン太は当然とでも言わんばかりだった。何かムカついたから殴っといた。

他の人にもドリンクを渡しに行こうと二人から離れようとしたらセナに大丈夫かと聞かれた。モン太は何の事か解らなかったみたいでセナと私を交互に見ていた。

一瞬ドキリとしたが、大丈夫!と一言返し、私は歩き出した。今の私は中々のポーカーフェイスだったと思う。誰かに誉めてほしい位だ。よし、この調子で次はヒル魔先輩だ!

「ヒル魔先輩、ドリンク」
「あァ」
「それと、準決勝進出おめでとうございます!」
「…………」
「それでは!」
「………オイ、糞ガリ勉」
「…その呼び方いつになったらやめてくれるんですかね」
「てめぇは泥門デビルバッツのマネージャーだ」
「は」
「糞共が喜んでる時はてめぇも馬鹿みたいに喜んでりゃ良いんだよ」
「……………」














皆よく見てるなァ














(ありがとうございます)



 

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