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「で?二日もサボった理由は?」
「…………」
只今校庭でヒル魔先輩と向かい合って、いや、ヒル魔先輩が仁王立ちしている前で私は正座している。先輩はマシンガンを肩に乗っけながら私を見下ろしている。
真横でアメフト部の奴らは練習中だが、時折此方をチラチラと見てくる。心配なのか興味本位なのか。どちらにせよ見てくる位なら助けてほしい。
私は恐れ多くも部活を二日も無断でサボった。一日目は体育祭の日だ。元々校内行事には参加率が悪い私だ。今回も例によってサボっただけに過ぎない。それに部活の為だけに学校に行くなんて面倒過ぎる。二日目、昨日は体育館にバスケ部を見に行っていたから。だってサボりでもしなければ佐藤先輩を見る事が出来なかったんだから仕方無いだろう。
「バラされても文句ねぇんだな?」
「バラすって言ってもアメフト部の奴らにですよね?」
「俺がそんな優しい男に見えたか?」
「……………」
いや、まァ確かに優しいと思った事は無いけど。いやいや…え?
「え、ちょ、まさか全校生徒とか、」
「あ、居た居た。おーい!ヒル魔ー!…って、中原?」
「佐藤先輩?」
「何でお前正座なんかしてんだ」
先輩こそなんで此処に。今日もバスケ部の練習日の筈じゃ、と言おうとしてハッとしてヒル魔先輩をバッと見上げる。………その途轍もなく楽しそうな顔は一体何を考えているのか、それが読めた自分は凄いと思うが同時に血の気が引いた。
「何だよ、急に呼び出しやがって」
「オイ、糞バスケ馬鹿。こいつの好きな奴誰だか知ってるか?」
「中原の?」
「ささささ佐藤先輩!今日部活ですよね!どうぞ行って下さい!」
佐藤先輩を糞バスケ馬鹿とは何て事言いやがる!と言ってやりたかったが佐藤先輩も満更ではないようなので言うのをやめた。いや、そんな事よりも今は私の気持ちがバレるのを阻止せねば!
「ヒル魔先輩なんて放っといて良いですから!」
「こいつの好きな奴って、俺だろ?」
「「…は?」」
い、今佐藤先輩は何て言った?私の好きな奴は俺、だと?いや、え?うそ、バレてた?
困惑が収まりバレてた事を脳が認識したら全身が熱くなった。今顔真っ赤だと思う。
そんな私に追い討ちをかけるかのように佐藤先輩は私の肩に組んできた。顔が、近い。
「ヒル魔ァ、俺の可愛い後輩あんま虐めんなよな」
「……………」
「じゃあな」
佐藤先輩はいつものように私の頭をぐしゃぐしゃと撫でてから体育館へと向かっていった。私はまだ混乱中だ。先輩は私が先輩の事を知った上であんな事やこんな事を言ってた?どういう意味?考えれば考える程訳が解らなくなる。
先輩が去った後をずっと眺めながら目まぐるしく考えていると近くから舌打ちが聞こえてきた。きっとヒル魔先輩だ。遠ざかる音がする。良かった、こんな赤くなった顔なんて見られたくない。
ホッとしたのも束の間、今度は近付く音。デリカシーの無い奴だな。一言物申してやろうと振り返ればそこには十文字が立っていた。
「ここは放っておくもんじゃないの?」
「ヒル魔に言われたんだ、仕方無ぇだろ」
「ヒル魔先輩に?」
「お前を部室に連れてけってよ」
何だそれ。今の私じゃ居ても仕事出来やしねえってか?ふん、よく解ってるじゃないか。お言葉に甘えて部室に行かせてもらおう。
………アレ、ちょ、足が動かない。先輩の言葉で動揺し過ぎたかな。立ってるのも精一杯だ。
「オイ、何してんだ、行くぞ」
「……十文字」
「あ?」
「出来れば私を担いで行ってはくれないだろうか」
「はぁ?」
おぶられるのは恥ずかしいし、かと言って担いで行ってもらう他に方法も思い付かない。我ながら何て情けない。
怪訝な顔をする十文字に両腕を広げてアピール。更に怪訝な顔をする十文字。
「さっきの佐藤先輩って奴に見られたらどーすんだよ」
「え、別に平気じゃね?」
「…はぁー、仕方無ぇなァ」
「お?」
担ぐのではなくおぶられた。目の前に金髪が見える。何だ何だ、恥ずかしいぞコレ。
まァ担がれると腹にキそうだからこのままで良いか。
「いやァ、悪いね。よ!さすがラインマン!」
「おだてても何も出ねぇぞ」
呆れたように笑いながらもおぶってくれている十文字はやっぱり良い奴だ。
悪魔はやっぱり悪魔
(ね、セナ!あの二人って何かお似合いじゃない!?)
(え、あーう、うん、そうだね?)