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今日は待ちに待ったハンター試験の日。
この日の為に身体を鍛えて鍛えまくって、情報も得られるだけ得てきた(と、思う)。
事前に調べてきて本当に良かった。だって会場に着くまでがあんなに意地悪な順路だなんて、知らずに来たら絶対に辿り着かなかっただろう。一体何人の人が失格となったのやら。
兎に角、私は無事に一次会場へと着く事が出来た。ステーキ定食も食べたし、準備は万端だ。後は試験が始まるのを待つだけである。
新人潰しのトンパ。様々な情報を私に提供してくれた情報屋によると、そう言う人が受験者の中に居るらしい。自分は試験の合格を目指さず、新人を潰す事しか考えていない糞野郎、らしい。そいつには気を付けろと言ってくれた情報屋に感謝だ。さすがと言うか何と言うか、私が会場に着いてから数分も経たぬ内に私に近付いてきた。………胡散臭い顔してるなこの人。
気を付けろと言われていたのもあるが、こんな胡散臭い顔をしている人が薦めるジュースなんて一体誰が飲むと言うのだろうか。私はトンパが押し付けてくるジュースを丁重に断り、自分で持ってきていた水をコクリと一口飲んだ。
壁際に座って周りを見渡すと、大分人数が増えてきていた。大体300人位だろうか。まだ時間はあるし、これからまた人数は増えてくるだろう。特にする事も無かったので、トンパが(聞いてもいないのに)教えてくれた要注意人物を探してみる。
受験番号44番のピエロみたいな格好をしている奴。名前は確かヒソカだっただろうか。奴は言われるまでもなく危険だと解る。流れ出ているオーラが禍々しいのだ。半径10m以内には絶対に入らないでおこう(あまり意味は無いだろうけど)。
あとトンパは言ってなかったが、気になるのは受験番号301番の全身針だらけの何だか気持ち悪い奴だろうか。見た目的に近付きたくないのもあるが、奴のオーラが危険だと言っている。触らぬ神に祟り無し、だ。
以上の二人だけが念を使えるようだ。念は使えなくても強い人も居ると思うが、油断さえしなければ失格になる事はそう無いだろう(と、信じたい)。
それにしても受験番号99番の少年。あんな年端もいかない子供も受験するのか。ボードを持ち歩き、如何にもやんちゃです的な少年だ。でもこの会場に居るからにはそれなりに実力があるのだろう。恐るべし、ハンター試験。
そうだ、一応言っておくが、私は念を使う事が出来る。念を覚えてまだ日は浅いが、基本や応用はきちんと修行してきた。系統は判っているし、必殺技を作るコトも可能だった……が、自分に必要なものが何か解らなかったので必殺技はまだ思案中だ。
そんな事を考えていると誰かが近付いてきたのか、私に影がかかった。そちらを見ると何やら先が尖った靴を履いているのが見えた。そのまま視線を上へとずらしていく。すると其処に居たのは近付くまいと心に決めていたピエロが立っていた。
「げ」
「やあ◆」
「……何か用ですか」
「君暇そうだったからさ、話でもしてあげようかと思って★」
「遠慮しておきます」
「そんなつれない事言うなよ◆」
そりゃ言いたくもなる。近付かないと決めていたのに、まさか本人から近付いてこようとは。断ったら殺される気もしたが、ただ近くに居たくないと言う気持ちの方が強かった。自分の正直者め。
ヒソカは私の気持ちなどお構いなしに、私の隣へと座った。気まずいにも程がある。
「君、念が使えるんだろ?」
「…一応」
「……早熟って感じだな◆」
「は?早熟?」
「いや、こっちの話◆」
…早熟って何の話だよオイ。笑顔で誤魔化したつもりだろうが身体は危険を察知したのか腕に鳥肌が立った。こいつはもしかしたら変態なのかもしれない。
「名前は?」
「人に名前を聞く時は先ず自分から名乗るのが礼儀でしょう」
「それもそうだね◆僕の名前はヒソカ。君は?」
「チハルです」
「チハルか……よろしく◆」
これ程までによろしくしたくない奴に会う事はそう無いだろう。
暫く話をし(私は全て適当に相槌を打っていただけだが)、ヒソカは立ち上がって何処かに行こうとしていた。やっと解放された……と思っていたらカッ!と音を立てて足元にトランプが刺さっていた。
「ハートのエース…?」
「チハル、最後まで死ぬなよ◆」
トランプにチュッと音を立てながらそう言ったヒソカを見て、全身に鳥肌が立つのが判った。
悪魔との出会い
(いっその事殺してくれ)