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「二次試験会場まで私について来る事。これが一次試験でございます」



一次試験官であるサトツはそう言うと前に向き直りスタスタと歩き始めた。サトツは歩いているように見えるが、私達受験生は普通に走っている。何なんだあの人。

因みに私の現在の位置は真ん中の後ろ辺りだろうか。この位置では試験官が見えない為、目の前の受験生達に全てを託しているこの状況は一抹の不安を覚える。前に行きたいのは山々だが、行きたくない。“行けない”のではなく“行きたくない”のだ。何故かって?そりゃあの変態ピエロもといヒソカが居るからだよ…!



「チックショー…出るに出れん」



試験が始まる前に奴と話していて感じた事は、こいつとは関わりたくない、と言う事だ。奴が言葉を発する度に私は鳥肌が立ち、全く以て嫌な時間だった。奴が変態なのと、底知れぬオーラのせいだろう(八割は変態)。

なので試験中は一切接触しないよう、細心の注意を払って行動しようと心に決めたのである。



「それにしても…なんて退屈な試験なんだ」



きっとこの試験は持久力と精神力を試すものなのだろう。行き先も何も伝えられず、先の見えない長い暗い道をひたすら走らなければならない。精神がやられればそれに比例して体力も削られていく。一体この一次試験で何人が脱落するのだろうか。

まァ私は持久力も精神力にも自信があるので、落ちるつもりは更々無い。

しかし、この先の見えない持久走に一人寂しく無言で行くのは少々辛いものがある。こう言ってはなんだが、私は意外と寂しがりやだ(自分で言ってて気持ち悪い)。誰か試験に支障を与えない位の余裕があって、尚且つ楽しく喋れそうな人は居ないだろうか(話し掛けた私のせいで試験に落ちたといちゃもん付けられたら堪らないもの)。



「…………」

「………(スィーーー)」

「…ちょいとそこのスケボ少年」

「あ?」



誰か良い話し相手は居ないかと周りを見ようとしたら、私の真横からスケボに乗った少年が優雅に滑ってきた。見た瞬間、話し相手はこの子にしようと決めた。

まだ念は覚えていないようだが、この子ならその内覚えるだろう。この子には素質がある。そんな子なら話し掛けたとしても楽に試験は突破してくれるだろう。

そして何より私はこの子と話をしてみたい。



「ねぇねぇ、今私すっごい暇なんだ。良かったらお話しながら行かない?」

「…別に良いけど」

「ありがと。私チハル」

「俺はキルア」



初めは不信な表情をしていたキルアだったが、話していく内に私には害が無いと判断してくれたのか普通に会話していた。それにしてもキルアは何だか猫を連想させる。



「チハルって意外と体力あんのな」

「意外とって何だ」

「そのまんまの意味だよ。こんだけ話しながら走ってても息一つ乱さないし」

「まァこれでも一応鍛えてますからねー」

「ふぅん…もっと前行こうぜ」

「あ、ちょっと待ってよ!」



なんてこったい!前に行こうだなんて自殺行為も良いとこだ!…と声を高らかにして言いたいがここは我慢だ。私はまだキルアと話がしたいんだ!一人はつまらん!

とか考えてる内にキルアは前方でスケボから降りて誰かと話していた。え、何で?



「キルアー、一体どうしたのさ」

「アレ?お姉さん誰?」

「こいつはチハル」

「俺はゴン!よろしくね!」

「クラピカだ」

「レオリオだ。よろしくな」

「えーと、よろしく?」



……試験に似つかわしくないこの和気あいあいとした感じで暫く皆で話しをしていた。煩いせいか周りからめっちゃ見られてるけどそんなの気にしない。いやはや、楽しい。



「それにしても皆仲良いねぇ」

「え?チハルも一緒でしょ?」

「え」

「チハルも一緒じゃなきゃ俺つまんないよ!」

「…………」














天使との出会い














(ゴンンンンン!)
(うわぁ!)
(マジ可愛いマジ癒やしマジお持ち帰りしたいんですけど!)
(((やめろ)))




 

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