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「あーじめじめする」



先程の薄暗い道から一転、今度は湿原を走っている。ヌメーレ湿原には妙な生物が多く生息しており、騙されないように注意しなければならない。これは試験官も言ってた事だが、私は情報屋から聞いていた。ホント何でも知ってるなあの情報屋。

それにしてもさっきから後ろからの殺気と言うかオーラが凄まじいんだけど。見たくはないので振り向かないが、このオーラはヒソカのものだ。鳥肌立つから止めてほしい。



「ゴン、チハル、もっと前に行こう」

「賛成」

「うん、試験官を見失うといけないもんね」

「そんなことよりヒソカから離れた方が良い。あいつ殺しをしたくてウズウズしてるから」



霧に乗じてかなり殺るぜと不敵にヒソカを見やりながら言ったキルアにゴンは不思議そうな顔をしてキルアを見た。確かに普通に考えたらそんな事は絶対解からないだろう。薄々感じてはいたが、キルアはやっぱり闇側の人間のようだ。

臭いで判ると聞いたゴンは実際に臭いを嗅いでいた。何この子ホント可愛いんだけど。

いつの間にやら大分後ろの方に行ったレオリオとクラピカに、キルアが言った事を大声で伝えていた。そしてレオリオも負けじと大声だった。て言うか周りが呆れてるんだけど。



「緊張感の無い奴らだな、もー」

「良いじゃん、楽しいし」

「言っとくけど、チハルもだろ」

「マジでか」



それは結構ショックがでかい。これでもかなり緊張してるのに。と言ったら嘘つけと言われた。いや、真実です。

また暫くの間走り続けていた。霧が徐々に濃くなってきているのは気のせいではないだろう。こんなじめじめした所を走ってると余計体力消耗する気がする。はぁ、と溜め息をついたらゴンが私の顔を覗き込んできた。え、何?



「チハル大丈夫?」

「ゴン…!」



ゴンが私の心配をしてくれた!ゴンはやっぱり私の天使だよ!と歓喜していたらキルアが嫌そうな顔をした。何だよ何か文句あるかコノヤロー。



「ゴン、こいつの心配なんてするだけ無駄だぜ」

「何て事を言うんだこの子は!」

「どうせこのじめじめした空気が嫌になったとかだろ」

「うっ…」



見事に図星をつかれて何も言えなかった。チクショー、何で解ったんだ。

それからまたそんな遣り取りをしたり、じゃれながら話をしていたら突然後ろの方から悲鳴が聞こえてきた。後ろを振り返って見ても何も見えなかった。いつの間にか後方集団は湿原に住む生物達に騙されたのか、大分離れた所に居た。クラピカ達は大丈夫だろうか。

その後何回も後方から悲鳴が聞こえてきた。多くの声が聞こえたから、かなり人数が減っただろう。後ろを向きながら走っているゴンはきっとクラピカ達の心配をしているに違いない。それに気付いたキルアはゴンの意識を試験へと戻させた。

前を走る受験者が霧のせいで霞んで見える。見失ったら二度と試験を受ける事は出来なくなるだろう。



「精々友達の悲鳴が聞こえないように祈るんだな」



キルアがゴンにそう言ったすぐだった。微かに聞こえてきたレオリオの声に気付いたゴンは方向転換してレオリオ達の方へと走っていった。



「ゴン!」



キルアもいきなりの事で驚いたのか一瞬足を止めゴンの方へと向いたが、すぐに前に向き直り走り出した。しかし私はゴンが走っていった方向へと向いたままである。



「オイ!チハル!」

「……キルアは先行ってて!」

「は!?」



そう一言言って私はゴンを追い掛けるように走り出した。

きっとレオリオ達はあの変態野郎に捕まったんだと思う。だってレオリオの声が聞こえた時に鳥肌が立った。この試験中で鳥肌が立つなんて奴以外に有り得ない。そんな変態野郎が居る危険地帯にマイエンジェルゴンをたった一人で送り込むなんて事は私には出来ない!

こんなむさ苦しい男共の中癒やしが無いのは大分キツいものがある。だから例え火の中、水の中、変態の中だろうと私は癒やしの為には危険を省みないのさ!

私が行くまで死なないでよねマイエンジェル!















天使救出大作戦















(………でもやっぱりちょっと変態の中は勘弁したいかもしれない)



 

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