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□凸凹
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「平介!」

「はい?」


平介の部屋で佐藤と平介と菓子食いながら雑誌を読んでいたら、下からドタドタとでかい足音を鳴らして誰かが上がってくるのがわかった。音を立ててた本人は、平介の部屋のドアを勢い良く開けて入ってきた。何やら凄い剣幕だ。


「チーズケーキ作って!」

「えー」

「材料は全部用意したから!」

「…ベイクド?レア?」

「ベイクド!」


平介大好きー!と言いながら平介に抱き付く女。こいつは平介の彼女でも何でもない。ただの平介の幼馴染みだ。幼稚園からの付き合いで家は隣。因みに中学も一緒だったので、必然的に俺も知り合いだ。ていうか高校も一緒だから佐藤も知り合いか。


「なまえ、重い」

「女の子に向かって重いなんて言っちゃダメだよ」

「相変わらず仲良いんだね」

「あ、佐藤じゃん。てか鈴木も居たんだ」

「今更かよ」


どんだけ猪突猛進なんだこいつ。クラスが違うせいか学校では普段あまり会わないが、平介の家に来ると結構な確率で会ってる気がする。その度に何かケーキを作れと要求している気がする。いや気がするんじゃない、してる。


「あり、あっくんは?」

「リビングに居るんじゃないの?」

「挨拶してこよーっと」


平介から離れて今度は静かに降りていくみょうじ。静かに歩けるなら最初から静かに歩けっつーの。

こいつらは昔からそーだ(昔と言っても中学からしか知らないが)。無駄に元気なみょうじに、全てにおいてやる気のない(菓子以外)平介。見ているとみょうじが空回ってるっぽいけど、なんだかんだでコレがこいつらのベストなんだろう。こいつらの遣り取りを一挙手一投足見ていると疲れて仕方ないからほとんど無視だ。佐藤も俺と同じらしく、菓子食いながら漫画を読んでいた。だよな。


「いやぁ、なまえが来るとあっくんと遊んでくれるからなぁ」

「人使ってんじゃねーよ」


平介はよっこいせ、と言いながら立ち上がって部屋を出て行く。オヤジくせぇ。きっとみょうじが持ってきた材料なんかを確認しに行くつもりなんだろう。何か飲み物持ってこいと言えば、鈴木も人使い荒いなーなんてぼやきやがった。うっせーよ。


「あの二人ってさ、付き合わないのかな」

「はぁぁぁあ?」


平介とみょうじが付き合う?あの二人がアハンウフン言いながらいちゃつく様を思い浮かべる。うげ、気持ち悪。ていうかあいつらがそんな甘い雰囲気になるなんて考えられない。


「気持ち悪いこと言ってんなよ」

「だって結構良い雰囲気だと思わない?」


確かにあの平介のローテンションにはみょうじのハイテンションは釣り合いが取れてるとは思う。二人共面倒臭い性格してるくせに、お互いの扱い方は上手い。だからって…なぁ?


「ちょっと下行ってみない?」

「出歯亀か」


なんて言いつつ、俺も気になってしまう。佐藤がにやけ顔で見てくる。うぜぇ。

静かに下に降りていき、ドアに隠れるようにして中を覗く。リビングにはみょうじが居てなんか笑ってる。ソファーでよく見えないが、あの従兄弟も一緒に居るんだろう。その時調度平介がキッチンから出てきた。持ってるお盆の上には人数分のカップ。

みょうじ達に近付いてカップを置いていく。ちゃっかりソファーに座ってくつろいでいる。オイ、それ湯気出てんだからホットだろ。早く持ってこいよ冷めんだろ。


「わっ、平介めっちゃ笑ってる」


佐藤が言うように確かにめっちゃ笑ってる。いつものへらっとした笑い方じゃない。なんか、こう、愛しむような。もしかして平介ってみょうじのこと好きなんじゃねーか、って思ってしまうような笑い方だ。

そう思ったらこうやって覗いてんのが馬鹿らしくなった。なんだかんだ、みょうじも平介のこと好きなんだろう。あいつは判りやすくて助かる。出歯亀も良いとこだ。見付かる前に部屋に戻ろうと佐藤の首根っこを掴んだが微動だにしない。オイ。


「さっさと戻んぞ」

「えー!もうちょっと!」

「うっせーよ!バレんだろ!」

「あ」

ガチャ、

「………出歯亀?」


黙れ。









凸凹コンビ

(早いとこくっついちまえ)



 

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