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□変な先輩
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ガラッ!

「チャームポイントは上腕三頭筋!」

「………」

「チャームポイントは僧帽筋!」

「………」

「チャームポ、イッ、っふ、あははははは!!!」

「真琴、あいつ殴っていいか」

「ハル!?」



つい先日、私は最上級生に進級した。そしてまた橘と七瀬と同じクラスになった。橘と一緒なのは嬉しいけど、七瀬と一緒なのは喜べない。

最上級生にもなると色々としないといけない事が多く、部活勧誘もその一つだ。一応私も部活には入っているけどヒラ部員なので壇上には上がらず、後ろから生暖かい目で部長と副部長を見守っていた。
ついでなので他の部活も見ていこうと思って見てたら水泳部の番になり、出て来た半裸の男子達とそれぞれの紹介を聞いて爆笑した。一年生達がドン引きしてる中、私の笑い声はさぞかし体育館に響いたことだろう。

そしてその翌日、登校して教室に入ってきた橘と七瀬を見て笑いを堪えられなかった私は悪くないハズだ。あんなの笑うしかない。



「もー、水泳部最高だったよ!笑い過ぎてお腹痛い…!」

「あの笑い声みょうじさんだったんだね…」

「二年の子達は自信満々にやってるわ、七瀬は淡々とチャームポイント言ってるわ、橘は顔赤くして言ってるわでもう…ブフォッいったあ!?」

「うるさい」



思い出し笑いをしたら七瀬に頭を叩かれた。何すんだコノヤロー、と七瀬を睨んでみたけど七瀬は素知らぬ顔で外に顔を向けている。橘を見ても苦笑が返ってくるだけだった。ふんだ、こんな扱いにももう慣れたぜ。



「いやしかし、誰があのネタ考えたの?」

「あぁ、うちのマネージャーだよ」

「あ、あの後輩ちゃん?センス良いわー素晴らしい!」



私達の学年でも可愛いと噂のあの後輩ちゃんか…あの見た目からあんなネタが出てくるとは…ちょっとお話してみたいぞ。

その後も橘と色々と話していたけど先生が来たので中断され、私はおとなしく席に戻った。よし、寝る勉だ。










「ハルちゃん!マコちゃん!!」



どうやら熟睡していたらしい私は、誰かの発した大きい声で目が覚めた。時計を見たら昼休みの時間だった。うわ、さすがに寝過ぎた。やばい、ノート全然取ってない。

起きた原因の声を探してみたら橘と七瀬の周りにどこかで見た子達が集まっていた。あーあのふわふわした髪の子の声っぽい。起こしてくれてありがとう、お陰で昼ご飯を食いっぱぐれる羽目にならずに済んだよ。

…しかしどこかで見た顔だよなぁ…あのふわふわ金髪とメガネ………あ!



「チャームポイントはヒラメ筋!と三角筋…と何だっけ?」

「上腕二頭筋です!」

「あーそうそッブフォ!き、決めポーズまで…!あ、ありがとう…!」



メガネ君の決めポーズと自信満々の顔にまた爆笑してしまった。ヒーヒー言いながら橘の背中を叩いていたらメガネ君が不満そうな顔をしたからまた笑いが止まらない。どんだけ自信あるんだよ…!



「僕達の部活紹介見てくれてたの?」

「っ、見てた見てた、めっちゃ面白かった!」



グッジョブ!とふわふわ金髪君に親指を立てればパァッと華やかな笑顔が返ってきた。お、おう、眩しい。



「ありがとー!ねぇ!先輩も水泳部入らない!?あっ、僕葉月渚って言うんだ!先輩は!?」

「みょうじなまえ。今から水泳部はちょっとキツイかなぁ」

「そっかぁ…」

「渚君、三年の先輩ではなく一年生を勧誘しなければ意味がないじゃないですか」



見るからに落ち込む葉月君に良心が痛んだけど、メガネ君の言う通り三年生を部活に誘ってどうすんだ。



「そうそう、メガネ君の言うとおり」

「め!?メガネ君って僕の事ですか!?」

「怜ちゃん以外にメガネかけてる子いないよ?」

「僕には竜ケ崎怜という名前があるんです!ちゃんと呼んでください!」

「…っ、竜ケ崎君の名前知らなかったからさぁ、ごめんごめん」



やばい、ホントにこの子ツボる。逐一面白いんだけど何この子。



「やー、水泳部にはネタが豊富ですなぁ」

「そ、そうかな」

「あ、もちろん七瀬もネタに貢献していっだ!今日二回目なんですけど!?」

「うるさい」

「くっそ、バカになったら七瀬のせいだ」

「安心しろ、元からバカだ」

「殺す」

「わああ!みょうじさん落ち着いて!」



橘に羽交い締めにされてる様を後ろの後輩達が唖然と見ていたことに気付かず、私は七瀬を殴ろうと躍起になっていた。









変な先輩

(面白い人だったね!)
(何故僕はあんなに笑われたんだ…)




 

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