短編・番外編

□やりたいのは「今」だ
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「本当はお前が、雷門を潰そうとしているんじゃないのか!?」

心からの倉間先輩の叫び。

俺は、今の生で3度目だ。1度目は普通の一般人。2度目は半田真一に成り代わる。そして3度目は、松風天馬だ。
よりによって、主人公とか……!? なんて思ったりしたけど、開き直って楽しんで生きてきた。空気を読んだり読まなかったり。
だけどな、

「……俺は、ちゃんと自覚してますよ。勝手なわがままだってくらい」
「っなら!」
「でもですね、俺は『今』『ここで』サッカーをやりたいんだ。高校へ行けば? 楽しいサッカーができる? そんなの待てない。それにそれは逃げだ。反抗できるのに何故しない? 潰されるのが怖いから? そうでしょうね。学校が無くなるのは困りますもんね。でもさ、学校が潰されて1番困る人って誰だと思う? はい、信助。当ててみて」
「ぼ、ぼく!?」

突然振られて動揺するが、彼なりに考えているようだ。しばらくすると、分からなかったのか首を横に振る。

「答えは理事長と校長。自分たちの名誉と利益のためだけに動く、汚い大人の代表。あいつらのためだけに我慢するのって、しゃくじゃありません? だから俺は、反対するし反抗するし反乱する。汚いサッカーなんてやりたくない。キレイで楽しいサッカーをやりたいんです。高校へ行けば、みんなバラバラになるかもしれない。だから俺は『今』やりたい。将来やれるから我慢する? それも完全なる逃げだ。子どもはね、大人に反抗してナンボなんですよ。俺たちは子どもだ。せめて中学生の間は……子どもでいいんです。大人になったら、駄目なんです」

ふぅ……とひと息つく。さっと見渡すと、バツの悪そうな顔や何かが刺さった顔、逆に輝いている顔もある。それぞれの特徴が出た反応だな、と内心苦笑した。
なんだか気まずくなって、円堂……監督に断りを入れてから、帰った。



***

やりたいのは、今なんだ。
俺の大切な思い出がつまった、この雷門中で。

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