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□秒針は静かに
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それから1ヵ月程経ったある日。
雷淀雪斗は生徒からなかなかの人気を得ていた。
彼の担当教科は殆どの生徒が苦手とする数学だったが、その授業はわかりやすく生徒の信頼や尊敬も芽生えていたのだと思う。
そんな調子で、特に問題もなく、教師と生徒との関係を保っていた1Aの面々達。
そろそろ夏服だろうかと生徒が沸き立つなかの……転校生。


「…っざけんなよなー…なんで俺らの周りって…」

「…え?何?どうしたの2人とも」

綱吉、獄寺、山本がどうしたのかと愛羅と愛吏の元にやってくる。
さすがにと思い場所を屋上に移したところで、愛羅は頭を抱えて項垂れた。
その様子に、綱吉は嫌な予感を抱きつつ訊ねる。


『…綱吉さま…大変申し上げにくいのですが……』

愛吏の笑顔が、若干だが引きつっている。
そりゃそうだ。おかしいと思うより他ならない。

「まさか…っ!あ、あの黒金くん……!?」

綱吉の顔が青ざめる。


「『裏の人間』」
「だ。」
『…の、ようです…』


悲鳴が、大空に吸い込まれていく。
愛吏は申し訳なさそうに、口を開いた。

『恐らくは、一般人の方ではないだろうと思われます。』

「それってまさかまた?!」

『今は推測に過ぎませんが…。
今のところこちらに明確な殺意や敵意は見受けられません。
けれど、それを隠しきることが出来る程の腕の持ち主なのか、目的が別にあるのかは不明です。
ただ、これについてはあまり探らないでおこうと思っています。』

「なんでだよ、怪しい奴ならすぐに……!」

「例えば、だ。獄寺。
そいつが仕事目的で此処に来ていて、でも標的は沢田達でなかったとする。
プロは標的以外の殺しはしない。それが邪魔しにきた者なら別だが。…ここまで言えばわかるだろ?」

「あっ…!折角標的じゃなかったのに、探っちゃうと、逆に目をつけられちゃうってこと…?!」

「なるほどな…でも大丈夫なのか?」

『これから警戒してください、とは言いません。それは私達の仕事です。
ただ…、もしも黒金さんと2人きりになるようなことがあるようなら、必ず私達に伝えてくださいませんか?』

「……っ」

コクコクと何度も頷く沢田と、生唾を飲み込む獄寺に山本。余計な心配、では終わらないだろう。
ともかく、このまま何も起きてくれるなよ、と、愛羅は大空を仰ぎなから願った。
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