Mix!!

□動き出したんだ
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『沢田くん、おはよう』

「え、おはよ…っ!!」

『そんなに驚かなくても…ね?』



クスクス、と実に愉快なものを見るように彼は、黒金君は、笑った。
眼鏡の奥の目は全然見えないけれど。



『ああ、そうだ。今日、雨が降るらしいよ。傘は持ってきた?』


「え、こんなに、晴れて、るのに…?」


『そう、晴れてるのに。その様子じゃ、ないんだね。なら、これ、貸してあげるよ』




そう言って鞄から取り出された可愛らしい柄の折り畳み傘を渡された。
そう、女の子が使うような、可愛い柄の。…え?



「女物だな」

『女性用、ですね…』


愛吏がその傘に触れようとする前に愛羅がそれを奪い取り、開く。



『もう、兄さま。…でも、これ、』


「あいつ男だよな」


『黒金さんが使用されてたのは男性用の傘でした』


「……」


『…あっ、で、でも!
人様の好みはそれぞれと言いますよね?!』


「愛吏、フォロー出来てねぇからなそれ」


沈黙。周りの生徒の視線が痛い。
愛羅はいいとしても、俺が女物とか、ありえないしね…
もう恥ずかしくってたまらなくなってきた。



『まあ怪しい所はありませんが…』



黒金君は何者で、何がしたいのかさらにわからなくなってきた。


今日の天気予報は晴れ。降水確率10%。


だったけれど、




「……」



めっちゃ土砂降り。
彼はどこかでこれを見て、笑っているのだろうか。
まるで、予言者みたいな。いや、そんなことはないんだろうけれど。


たまたま、そう、たまたま当たったんだよ。



万一、と愛吏が貸してくれた傘を差して、雨の中を急ぎ足で歩く。
「本当に?」と誰かが頭の中で問いかける。
いや、降水確率が10%もあるのなら、当たると思ったんでしょ。



「はあ、はあっ…」



にゃー…



「え……?」




黒猫。俺をまっすぐ見つめる、真っ赤な目。
尻尾を揺らして、まるでついてこいというようにチラチラとこちらを見る。


今思うと、俺はなんであの時ついっていったんだろう。


誘われるままついてきたのは路地裏で。
にーにーと箱に置き去りにされた子猫が3匹。
にゃーと鳴く猫は、まるで助けて、というようで。


雨避けに、と傘を差しだした時だった。



「……え?」



後ろから前にこぼれてきた赤。




『折角人が忠告してあげたのに、なんで聞いてくれてないかな…』
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