戦国

□魔風
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小太郎が天井裏に音もなく忍ぶと、溜息に似た声が微かに聞こえる。

(……。)

僅かに光が洩れている隙間から、小太郎は音もなく覗いた。




(…ふッ…。)

僅かに開いた唇から掠める息を吐き、ユルリと着物を乱すと、すでに下帯越しに膨らむ屹立が熱をズクズクと孕んでいる。
もどかしそうにずらし、指先で滲み出る先走りを撫でると、ぴくりと震え鈴口が滴を垂らし始める。

「ァ……うァ…。」

内から湧き出る欲に蝕まれた政宗は、頭を窓際に預けると肉竿を扱き出した。脳を貫く快感にびくんと震えると、膝が前に擦れて行き、終いには腰を前に突き出すあられもない姿を月に晒しながら、尚も指は醒めぬ欲を更に貪り続ける…。







−−

今から半年前。

風魔は北条の密書を届けに、深夜の闇に紛れて青葉城に現れた。

そこで、竜の名を持つ不敵な若き城主と、右目と呼ばれる射るが如き炯眼の忠臣に襖ごしに拝謁した。

相手に姿は決して見せない。




「Hey、アンタ伝説の忍って言うらしいじゃねぇか。」


突然、任務を終え帰ろうとする風魔に向かって政宗が声をかける。
僅かだが、風魔の動きを止めたのを障子越しに確認すると、

「なあ、俺に姿を見せてみないか?」
と、言うと不敵に微笑んだ。


「政宗様!」

小十郎に鋭く叱咤され
「ふん…Jokeだ。」
と言いながらも、懲りた様子は微塵もない。


風魔が伝説たる所以。
それは

『顔を見たものは、この世にいない。』


政宗はこの事実を真田の忍に聞いているハズなのに。(全く…、こちらの身になって頂きたい)
忍を鋭く警戒しながらも、主の無邪気な好奇心に小十郎は深く溜息を付いた。

二人の様子を静観していた兜の下で、小太郎の口元が微かに動く。

「…!」

一瞬だが、突然湧いた不可解な感情に小太郎は驚いた。
確かめる事も出来ずに、数瞬のうちに淡雪の様にすぐ溶けて無くなってしまったが…。

この静かな動揺は、二人に気付かれていなかった。


「…」



北条への帰り道。

冷え冷えと冴える奥州の月を大木から仰ぎ、先程の感情を思い出そうとするが、どこまでも暗く何も見えない心の闇があるばかり。


結局何も思い出せず、僅かに後ろ髪を引かれながらも、小太郎は何時も忍びの日々に戻っていった。


−−−−

季節が過ぎ、暫くたったある日。

主から伊達への潜入を命じられた。武田は真田幸村との親交から、共闘かとの噂がまことしやかに流れたからだった。
争いを好まない主だが、
二大勢力の共闘の噂と、選出した忍に興味を示した。

伝説の小太郎が自ら名乗り出たからだ。

暫く小太郎と無言の会話を交わしていた氏家だったが、突然ぴしゃりと膝を叩き、ニコリと微笑むとこれを赦しのだった…。


潜入して五日目。


若い男の当然の生理現象を見る事も少なくない。

(…。)

政宗の欲に苛まれる姿を、小太郎静かに見下ろす。



−−−





強弱をつけながら根元を扱くと、陰茎がびくびくと跳ねその度に躯を震わしながら吐息を漏らす。

「…ハァ…ぁ……」
反らした躯から着物がずれ、はだけた胸元を微かに擦ると、櫻色の突起がぷっくりと膨らみ、熱に浮かれた様に指先でなぶると、赤く色付きながら固く尖り政宗の愛撫に答えた。

「あ…は…」
躯をくねらせ、夢中で扱く陰茎から切なげに滴が流れ落ち、手の動きに合わせてくちゅくちゅといやらしく濡れた音を鳴らす。
手淫は絶え間無く速くなり、息を吐きながら胸を摘んでいた指を睾丸に移動させ双方を握り込むと、敏感な尖端から爆ぜるように淫水が噴き出す。

両手で包むように股間を弄れば、さらなる限界に躯はびくびくと跳ね上がりキュウと睾丸が伸縮する。

ただひたすら高みに行くためだけに。

僅かに口元を開け、溢れる快感に息を切らし苦しげで恍惚な表情は、昼のの不遜な城主とは対照的で、余計に猥らでとても美しいと思った。


(美しい…?)

小太郎は自分の中に沸いた言葉に驚いた。

こんな人間らしい感情を持つのは、どの位ぶりだろうか。



(…美しい…)
やっと見つけた答えを、心の中で何度も何度も反芻した。

同時に。

小太郎は全身を硬直させる。




「あ…ああっ…はっ…ぅああ!」
掠れた啼き声が一段と高くなり、政宗が欲火を大量に放つ刹那、

若さの放熱に涙で潤んだ左目は、天井裏に潜む小太郎の両目をハッキリと捕らえていたのだ。









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