-Lifily-〜CLANNAD×Fate〜
□旅路―なぞられる歪んだ道
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「…なるほどな」
杏の説明はこうだ。
…俺が気絶した後、セイバーも徐々に体を回復させていったらしい(まあ外部だけだろうが)。
その後、杏は気を失った俺たちを放っておくわけにもいかず、とりあえずこの渚の家まで連れてきたということだ。
「…血の跡を見たときは渚のお父さんもお母さんも驚いてたけど、すぐに入れてくれたの。ホント、渚に似て人思いな人達よね」
気を紛らわす為か、そんなことを言う杏。
でも、そうか。あの人達はそこまですごい人達だったんだな。
「じゃあ、とりあえずここを出るぞ」
「え?もう少しゆっくりしてから…」
「時間が無いんだ」
正確に言えば、じっとしている余裕は無い。
昼間の間は目立ったように襲っては来ないだろうが、このままここにいればそのままズルズルと夜になってしまう可能性だって十分ある。
「士郎、動けるか」
「ああ…なん、とか」
その辺はわかってくれてるのだろう、士郎もきつそうながら立ち上がる。
「ちょっと、いいから休みなさいよ!あんな…あんなことが起きた後で、なんでまたすぐ動き出すのよ!」
「杏、お前も一緒に来てくれ」
「え?」
「ついて、来てくれ」
関係者は一緒にいたほうがいい。
これ以上目撃者を出さない為には、いくらそれが無駄な努力でもそうするしかないから。
「小僧」
不意に、オッサンの声がした。
「え…」
「え、じゃねえ、いきなりあんな姿カッコで転がり込んでくるな。どっかのチンピラと姐ちゃんかと思っちまったじゃねえか」
チンピラ…
「話がある。来い」
「もう出ようと思うんだが」
「いいから、来い」
有無を言わさないオッサンの雰囲気に、
「…わかった」
俺は頷くしかなかった。
………
「一体何があった」
案の定、そんなことを聞かれた。
「道を歩いていたら小さな女の子と会って、そしたらなんかいきなりありえないくらいゴツイ体つきの人が銃刀法違反を思いっきりしながら襲ってきた。こっちも一名銃刀法違反して戦ったけど相手が強すぎたから俺が1回頑張ってあと一人1回頑張ってその後女の子のきまぐれで助かった」
よし、とりあえず嘘は言ってない。
「チンピラじゃねえか!」
「ですけど何か」
「年上にタメじゃねえか!」
「タメですけど何か」
「4番じゃねえか!」
「ラミですけど何か」
「やるな、小僧」
「それほどでも」
というか自分自身何を褒められたのか良くわからないし。
「で、ホントのところはどうだ」
しかも全然ごまかせてないっていう…
「でっていう」
「…」
…はい、わかりました。死にたくないんで素直に言います。
「…」
といっても…本当のことを言うわけには行かないしな…
「…」
「…こっちから質問していいか」
「…甘んじて聞いてやろう」
「n…娘さんとその彼氏はどうしてる」
「あん…いつ知った」
「杏に聞いた」
「…なぜか知らねえが、今年のはひどくてな…小僧もつきっきりだ。って小僧小僧まぎらわしいんだよっ!」
「あんたが使ってるだけだからな」
この人が話にいるとシリアスなのかギャグなのかすら判断がつかなくなってくる。
「で、それがどうしたんだ」
「いや、聞いてみただけ」
…町が関係しているこの戦いが、渚の容態に関与しているのは明白だ。これ以上ここにねじれが生まれると…
考えたくない。
「お前、一体何者なんだ」
「え…」
ドキッとした。
いや、そりゃ普通の人なら家に入れる前にその質問をするだろうが、この人にまでその質問をされるとは思わなかったし。
「…答えたくないならいい。話は終わりだ。どこへでも行っていいぞ」
あんたは警察官か…とか不満は残るが、今はそんな素っ気無さでもありがたい。
もう二度とこの家に来ることの無いよう願い、そこを離れた。