短編

□それでもこの想いは。
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どこで道を違えてしまったのか。

どこで間違ったのか。

この想いは変わらないはずなのに。

なぜ、そばに愛しい温もりがない。

何故…




通い慣れた喫茶店のガラスの向こうに、無意識にあいつの姿を捜した。

いつも待ち合わせに使ったこの場所に、あいつはもう二度とやってこないだろう。

それでもガラスの向こうに行き交う人の流れへ目を向けてしまう自分に苦笑する。

思い出すのは、あいつの涙…。




嫌い合って別れたわけではない。

自惚れではなく、あいつも自分を想ってる。

けれども、始まりの時とは違い、お互いの想いはもう交わらない。

「…もう、限界なんだ…」

そう言って、涙を零したあいつ。

泣きそうに見つめてくることはあっても、その頬を濡らす涙を見たことはなかったのに。

気がついた時には、もう既に関係は修復不可能で。

それでも何とか見て見ぬふりをしていた自分に、あいつは泣きながら現実を突き付けた。

お互いのためにも、それが最善の選択だと、分かっていた。




それでも。

この喪失感はどうすればいいのだろう。

もう二度ともとの二人には戻れない。

胸にぽっかりと開いてしまった風穴を、いったいどのように埋めればいい?




想っているのに。

忘れられないのに。

二人で過ごした空間に触れる度に、あいつの微笑みを思い出す。

笑いあった会話も、くだらない喧嘩も、なにもかも思い出せるのに。


隣に、あいつの温もりは、もう…ない。


それでも想っている。

この想いは、一体どこへ向かえばいいのか。





END?

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