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□〜乱舞記〜三の章
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閨室の中では、すでに黄泉が待っていた。
これから起こることを予想させる、軽く羽織りものを肩から掛けただけの黄泉の姿に、蔵馬は一歩退く。
「っ、」
「待ちくたびれましたぞ、蔵馬殿。さぁ、そんなに怖がらずにこちらへ」
蔵馬は弱気な姿を見せるまいと、黄泉の元へ歩みを進めようとする。
しかし、手は震え、足も震え、言葉は声にならない。
“こんなとこで怖じけづいちゃ駄目だ。こいつの弱みを掴まなきゃっ――!”
それから、やっとのことで黄泉の元へ歩いてこれた。
たったこれだけの距離を来るのに、どっと汗が出ているのに蔵馬は気付く。
「さぁ。そんな所に立ち呆けずに、私の隣へ」
それでもしばらく動けずにいると、黄泉に腕を強く引かれた。
一瞬で、黄泉に上から見下ろされる形にされる。
「っ、は、離せ!」
蔵馬は抵抗しようと必死に暴れる。すると、黄泉はその細い手首を一つにまとめ、蔵馬の頭上で強く押さえ付けた。
「―つっ!」
「蔵馬殿…」
氷のような冷たさを放ちながら薄く笑う目の前の男に、蔵馬の抵抗が弱々しくなる。
「あっ…」
「貴方は自分の立場をわかってなさすぎる…」
言いながら、もう片方の手で蔵馬の胸元をはだける。
「抵抗して苦しむよりは…」
黄泉は手を中に滑らせながら、そこにある色物を探り当てる。
「全てを諦め、貴方も楽しんだ方がずっと楽なのですよ?」
「くっ…誰がっ!、ぅ…」
「蔵馬殿。お父上は全てを承知で、貴方をこちらへ引き渡しました。
あなたは…私にこうされるだけのために、駒にされたのだ」
「違う!俺は捨て駒にはならないっ!ぁ、くっ…」
腕は頭上に纏め上げられたままに、必死に抵抗を続ける。
しかし黄泉の力は予想以上に強く、びくともしない。
その間にも黄泉の手は休まらず、蔵馬の柔肌を撫で続ける。