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□〜乱舞記〜七の章
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「ひ、えい…?今、なんて…」

「愛しています、蔵馬様。貴方は誰より愛しい方です」

「愛して…本当に?俺が主だからそう言うの?…慰めるため?」

「違います!私は、もう…臣下としては失格です。
貴方に正しく仕えられない。全う、できません。
貴方が愛しいのです、蔵馬様…」

「あ、飛影…俺も、俺も…愛してる。飛影…っ」


二人の影が、重なった――…。

蔵馬は飛影の腰に腕を回し、涙を堪えることもせずに全てを預けた。
今までも、蔵馬は全てを飛影に晒していた。預けていた。――彼を想う気持ち以外は。
この時が初めて、蔵馬の全てが飛影のものになった瞬間だった。

飛影は蔵馬の華奢な肩を優しく…そして強く、抱きしめた。
彼の心も身体も、その全てを絶対に離さないと心に誓うように。


**

それから、黄泉の寝室では落ち着かないと、すぐに自室に戻った。
自室にも人が忍んで監視されている可能性はある。どこから覗かれているかわからない。

しかし、それでも早く二人の空間が欲しかった。
やっとのことで、互いの長年の思いが通じた。やっと、立場なんていいと言うことができた。
気持ちだけでなく、早く全てを通じ合わせたい。二人のその思いは同じだった。


部屋に戻ってすぐ、一刻の時すら惜しいというかのように、二人は抱き合った。
倒れ込むように床に身を転ばせ、飛影の胸に蔵馬が顔を埋める形になる。
蔵馬は目の前にある心臓が動悸を速めているのを感じた。

そして、肌と肌で伝わるそのスピードが、自分の心臓までをも高揚させた。


「飛影…俺も、飛影のこと愛してる。ずっとずっと…ずっと前から。
主としてではなく、一人の人間として…飛影という男を求めてるよ」

「蔵馬様…っ。今この時、臣下という立場を棄てる飛影をお許し下さい。
私が従者に戻ったときは、身を賭して主にお仕え致します。
蔵馬様の…栄達のために、全力を尽くす私でいます」

「うん、飛影は仕事に他のことを影響させる人間じゃないもんね…。
わかってるよ。わかってるから、飛影…!早く忘れようっ、今は」

「はい、蔵馬様…」


それから、服を脱ぐことさえもどかしく、最初は着衣を身につけたまま抱き合った。
飛影はいつも蔵馬に忠心を尽くして仕えているように、この時も蔵馬を愛することに尽くした。
既に先程も達した蔵馬の下半身に顔をうずめ、蔵馬が音を上げるまで執拗に愛した。


「あ、飛影…っ!やっ、待って…!」

「蔵馬様、ただ感じて下さい。それが私の悦びなのです」

「やだ、やだよ、飛影っ!飛影はまだ一回だけじゃないかっ。
ねぇ、飛影、一緒に…俺、飛影と一緒にいきたいよっ。
せっかく通じ合うことができたんだから、ずっと…ずっと、繋がっていたい…」

「っ、蔵馬様…」







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