story

□under the tree
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ある週末の昼下がり――

今日はなんだか勉強する気分じゃない。
雪菜さんと映画にでも行こうと思ったら…どうやら編み物に没頭しているらしい。
泣く泣く声をかけるのを諦めた。

それなら可愛い猫たちと遊んでやろう、と思って階下に降りた。
しかし、いつもはソファーの上でゴロゴロしているはずのあいつらが、何故だか見当たらない。
不思議に思って、姉貴に声をかけてみた。

「おい、姉ちゃん!永吉たちはどうしたんだよ」

「あぁ、あいつらなら食っちまったよ」

「ぬぁ〜にぃっ!?」

「お姉様のお茶目な冗談を本気にすんな、馬鹿。そこだよ」

「そこ?」

あんたのような鬼女が言ったら、冗談とわかってても鳥肌が立つんだよ!
と心の中で呟きながら、姉貴が指差す方を見た。
するとそこには――窓辺には、可愛い猫たちが集まって日向ぼっこをしていた。
外に出て丸くなってるのもいる。


か、可愛いっ……!


「今日は久々に陽射しが暖かいからねぇ。あんたも交ざってきたらどう?」

なるほど、確かに今日は日光浴日和かもしれない。
季節は秋から冬に移行しようかというところ。
最近やたら寒い日が続いていたが、今日は空気も陽射しの色も暖かい。
窓越しにも、それを感じられるくらいだった。

よっしゃ!俺も交ざってくるかな。永吉〜っ

もちろん皆が可愛いのだが、中でもお気に入りの猫の名を呼びながら、その群れに近付いていった。
永吉は俺の姿を捉えると、歓迎してくれるようにニャアと鳴いた。
かぁっ!可愛いぜ!

すると、再び後ろから声をかけられた。

「あ、そうだ。和ぅ、ちょっと待ちな」

なんだよ!せっかくの猫たちとの触れ合いタイムを邪魔するな!
なんだか嫌な予感がして、訝しげに振り向いて声の主を見た。

「なんだよ、その生意気な目は。ねぇ和、鯛焼き食べたくない?」

「た、鯛焼き…?」
なんだよ突然。

「駅前にさ、新しい鯛焼き屋ができてんだよ」

鯛焼き…まぁ食いたいな。

「で?」

「猫と戯れる前に買ってきな」

「なにぃ!?自分で行けや、んなもん!」

ちょっとお調子に乗って反抗してみた。
すると、姉貴の頭に角がはえるのが見えた。開いた口からは牙が…あぁ。

「あんた、あたしに口答えすんの?」

あ、いや…

「雪菜ちゃんも食べたいってこの前言ってたな〜」

ん?そうか、よし!


「行かせて頂きます!」
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