parallel

□〜乱舞記〜一の章
2ページ/3ページ


「蔵馬様。国王がお呼びでございます」

「飛影…なんだろう。今から剣術の稽古のはずなのに」


時は血の交じる争いの絶えない時代。
蔵馬の父・雷禅が率いる空羅の国は隣国・絽海と覇権争いの真っ最中だった。蔵馬の兄・黒鵺の活躍もあり、現在は空羅が優勢。
今、空羅は絽海を撃破せんとしていた。


「行ってくるからな、蔵馬。俺に何かあったときのために、お前も稽古してろよ」

「兄上…」

黒鵺はそのような言葉を残して、つい先日出陣した。


「地梢はうちの不意打ちを警戒して、準備を整えてるというし…。もしかして地梢に攻め込むのだろうか」


側付きの飛影と共に、蔵馬は雷禅の前へ膝をついた。

「蔵馬、只今参りました」

雷禅は玉座から蔵馬を見据える。その眼は鋭く、ぴくりとも視線を揺るがさない。その姿は抑えようのない厳かな空気を纏っている。

誰もが彼の強さを感じずにはいられない。

「蔵馬…」

父のピリリとした眼に、蔵馬は僅かに怯んだ。

「はい。何の用でしょう。地梢を攻めるのですか」


ゴクリと喉を鳴らし、蔵馬は雷禅を見た。隣にいる飛影も同じく膝をつき、王の返事を待った。

ゆっくりと雷禅は口を開く。
「確かにお前には地梢に向かってもらう。しかし、兵としてではない。質としてだ。」

「なっ…」

雷禅から返ってきたのは予想だにしなかった台詞。
蔵馬は眼を見開き、言葉を失った。飛影も困惑し、驚いた表情を見せる。


雷禅は眉一つを動かさずに蔵馬を見据える。雷禅の側近の九浄が代わりに説明した。

「うちが絽海との抗戦の間は地梢を攻めないというのを、信じられんらしい。向こうも手を出さないと約束する代わりに、人質を寄越せと言ってきた。黄泉の奴…」

「それじゃ俺はただの捨て駒じゃないか!」

ショックでそれ以上の言葉を紡げない蔵馬を横に、今度は飛影が抗議する。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ