parallel

□〜乱舞記〜二の章
2ページ/3ページ



「…っ」

蔵馬は顔を強張らせ、緊張した面持ちになる。
絶対に目の前にいる男に屈しない、という気持ちは変わらない。しかし、その瞳を怖いと思う。

何を企んでいるのかわからない、読めない、恐ろしい眼をしている。


「蔵馬殿、今夜私の閨(ねや)に来なさい。可愛がってあげよう。貴方が望むように、質として」

「そんな…断るっ!そんなことのために来たのではない!」

「何をそんなに恐れている?そんなことでは懐剣にはなれない。やはり、御自ら捨て駒になろうと?」

「くっ…」


蔵馬は床に倒れている飛影を見る。幼い頃からずっとこの側付きを想ってきた。まだ彼への想いも叶えていないのに、こんな男に身体を遊ばれるなんて――


しかし、ここに来る前に誓った。必ずこの男の鼻をくじき、父を見返すと。そして、兄・黒鵺に負けない男になると…


“飛影、ごめんね。でも、俺は闘うよ…”


「いつか絶対に手綱を取ってやる!」

「ふっ。やれるものならやってみるといい」



宴も終わり、漸く与えられた部屋に来た。宴なんて楽しめたものではなかった。皆が黄泉に媚びへつらっていた。そして何よりそれを冷めた目で見ていた黄泉が憎かった。
そして、飛影の首をついた躯とかいう黄泉の直臣が許せなかった。

「飛影、大丈夫…?」

今は意識も戻り、自分の横に控える飛影を見る。


「はい、申し訳ありませんでした…。私が気を失ってる間に、黄泉殿とどのようなお話を?」

「っ、いや…」


真っ直ぐに飛影の目を見ることができない。閨に呼ばれた。一体飛影はどう思うのだろうか――

なんとか軽く流そうと、必死に笑顔を浮かべながら蔵馬は言った。


「閨に呼ばれただけだよ。大丈夫。あいつの懐に忍び込んで、何か掴んできてみせるよ」

「―っ!閨に…」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ