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□〜乱舞記〜二の章
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「…っ」
蔵馬は顔を強張らせ、緊張した面持ちになる。
絶対に目の前にいる男に屈しない、という気持ちは変わらない。しかし、その瞳を怖いと思う。
何を企んでいるのかわからない、読めない、恐ろしい眼をしている。
「蔵馬殿、今夜私の閨(ねや)に来なさい。可愛がってあげよう。貴方が望むように、質として」
「そんな…断るっ!そんなことのために来たのではない!」
「何をそんなに恐れている?そんなことでは懐剣にはなれない。やはり、御自ら捨て駒になろうと?」
「くっ…」
蔵馬は床に倒れている飛影を見る。幼い頃からずっとこの側付きを想ってきた。まだ彼への想いも叶えていないのに、こんな男に身体を遊ばれるなんて――
しかし、ここに来る前に誓った。必ずこの男の鼻をくじき、父を見返すと。そして、兄・黒鵺に負けない男になると…
“飛影、ごめんね。でも、俺は闘うよ…”
「いつか絶対に手綱を取ってやる!」
「ふっ。やれるものならやってみるといい」
宴も終わり、漸く与えられた部屋に来た。宴なんて楽しめたものではなかった。皆が黄泉に媚びへつらっていた。そして何よりそれを冷めた目で見ていた黄泉が憎かった。
そして、飛影の首をついた躯とかいう黄泉の直臣が許せなかった。
「飛影、大丈夫…?」
今は意識も戻り、自分の横に控える飛影を見る。
「はい、申し訳ありませんでした…。私が気を失ってる間に、黄泉殿とどのようなお話を?」
「っ、いや…」
真っ直ぐに飛影の目を見ることができない。閨に呼ばれた。一体飛影はどう思うのだろうか――
なんとか軽く流そうと、必死に笑顔を浮かべながら蔵馬は言った。
「閨に呼ばれただけだよ。大丈夫。あいつの懐に忍び込んで、何か掴んできてみせるよ」
「―っ!閨に…」