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□〜乱舞記〜五の章
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その日は異国について勉強をして、一日を過ごした。
昔から蔵馬に勉強を教えるのは後見人の飛影。
飛影はいつも蔵馬の右後ろから寄り添うようにして、蔵馬に講義をした。

自分の肩と飛影の胸が密着する。
それだけのことに、蔵馬は心臓を高鳴らせていた。

「蔵馬様、ちゃんと聞いておりますか?」

「あ、うん!ごめん」

自分以外には態度を荒くすることもある飛影だが、蔵馬に対しては物知りで本当に優しい側付き。
蔵馬はそんな飛影を独占しているのが好きだった。



そして、いつもの時間になる。


「蔵馬殿、黄泉様が閨にお呼びです」

躯が蔵馬を呼びに来た。
その瞬間、蔵馬を肩を僅かに震わせた。
きっとそれは、飛影にしかわからないぐらいものだった。

しかしそれに蔵馬の不安を感じとった飛影は、その肩を優しく撫でた。

「蔵馬様、私がいつものように待っていますから」

「うん…」

その言葉に、蔵馬は手を握り締めた。

いつもは飛影も躯も、閨室の外で終始待機していた。しかし、その日は違った。
いつものように閨室の前に腰を降ろそうとした飛影を、躯が遮った。

「駄目ですよ、飛影殿。
今日は貴方は私とこちらへ来て下さい」

「何を…」

抗う飛影の腕を取り、躯は強引に別室へ誘導した。
行き着いた部屋には、大きなベッドが一つ。
それに戸惑う飛影の隙をついて、躯は飛影をベッドに押し倒し、その手を括りつけた。

「躯殿、何をする!この縄を解け!」

「できません、飛影殿」

躯は飛影の顔の横に手をつき、体を上手く使って飛影の足も押さえ付けた。

「貴方はここで私と一夜を過ごすのです。大丈夫、悪いようにはしません」

「ふざけるな!放せっ!」

「私と寝たい者は幾人といるのですよ。極上と謳われたこの身体。
むしろ幸運に思いなさい」

躯は飛影にそっと口づけ、その逞しい身体に手を這わせ始めた。
飛影は腕を強引に引っ張って縄を解こうとするも、それはびくともしない。
女とは思えないその業に脱帽しつつ、唇を噛んだ。

「くそっ…」

「ふふふ、楽しみなさい。その方が貴方も楽ですよ」

「何故こんなことを…こんなことをして何になるというのだ!」

その詞に、躯は一瞬動きを止めた。
顔を俯け、ぽつりと呟く。

「…黄泉様のためです」

「何っ!?」

「黄泉様が望むのなら、何だって私はするのです。
貴方もそうでしょう?

わかったら大人しくして下さい」

「くっ…」


“蔵馬様…!”




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