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□〜乱舞記〜七の章
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飛影がもう一度蔵馬に自分のものを埋めて、動こうとする前に――。
蔵馬は飛影が着ていたものを全て脱がせた。
蔵馬が着ていたものは、既に飛影によって取り払われていた。
蔵馬はただ身体を繋ぎ合わせるだけでなく、全身を使って飛影を感じたかった。
いつもは自分より低い体温が、この時は蔵馬と同じくらいに上昇していた。
飛影の肌から伝わってくる体温と共に、飛影の気持ちまでもが流れ込んでくるように感じた。
肌と肌でしか伝わらないものがあるのではないか、と蔵馬は思った。
「あっ、飛影…ん、ああっ」
「蔵馬様、愛しています…、くっ、」
「あぁ、飛影、飛影っ…!」
最後に達した後、裸のまま身を寄せ合って寝た。
飛影は、いつもは蔵馬が寝るまで側に控え、蔵馬が寝たらそこを離れていた。
しかしこの時は、そこから離れる必要はなかった。
朝目覚めるときまでは、主と従者ではなく、ただの二人でいようという想いは一緒だった――…。
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「躯…何故このようなことになった」
黄泉は、自分の命じた通りに事を運ばせなかった躯に立腹していた。
うまくいけば今頃は、蔵馬は飛影への信用を失っているはずだった。
そして、自分がそこに割り入るつもりだった。…割り入れる自信があった。
躯はこれ程までに黄泉の命に背いたことはなかった。
飛影の言うことに心を動かされて止めたが、それを後悔する念が芽生え始めた。
それほど今の黄泉の威圧感は凄まじく、負けてしまっていた。
「黄泉様…っ、すみません!ただ、私は…」
「言い訳などいらん!答えろ、躯。何故、このようなことを?」
「…っ、それは…」
躯は黄泉を想う自分と、主に仕える臣下である自分との間で葛藤していた。
確かに、自分は黄泉を愛している。黄泉に愛される蔵馬を妬ましく感じる。
しかし、今回の判断はあくまで主である黄泉のために、臣下として下したものだった。
地梢の国の領主である黄泉のため…国のためのものだった。
しかし躯は、黄泉を愛してしまっている後ろめたさから、それをどう説明したら良いかわからなかった。
“私は飛影殿のように、うまく割りきれない!私は、どうすれば…っ”
言葉を失っている躯を見て、黄泉は言った。
「躯…お前が私を見る目に色があることに、私が気付いていないとでも思うか?」
「っ!黄泉様…」
「私はお前を有能な臣下だと見ていたが、買い被り過ぎていたようだな。
お前は色恋に流され、立場をし損じている」
「ち、違います!黄泉様!」
「お前は臣下として無能だ!明日から私の側近という立場から離れ…」
「黄泉様っ!」
先程までとは違い、強い目で黄泉を見ている躯。
黄泉はそんな躯の様子に気圧されした。そこまで強い目をする躯は初めてだった。
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