ザブハク
□4.
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――夢を見た。
僕は笑ってて、母上も父上もいる。あの人だけがどこにもいなくて、それに気付いた僕は、慌てて周りを見渡してあの人を呼ぶんだ。遠くに見慣れた背中を見つけて、走り寄ろうとすれば、貴方の身体は地面に倒れ込んだ。真っ白な雪が赤、朱、紅に染まっていく。
「再不斬さんっ!」
あの人の名前を叫んだ所で、漸く目が覚めた。…怖かった、あの人を失うことが。
「…白?すごい汗だ。嫌な夢でも見たか?」
「あっ、すいません起こしちゃいましたか?大丈夫です…雪止んだみたいですね、行きますか?」
「…ああ」
言えない。
貴方を失うことが怖いなんて。
情けない。
僕は、己を棄てきれてないんだ。
まだ貴方の武器にはなれない―――
「再不斬さん…」
「なんだ?」
「僕が死んだら、雪に埋めてください」
「武器は、持ち主が殺すものだ。持ち主が生きてる限り死なない。だから、お前のその言葉は聞かなかったことにする」