なにしろ晴天なものですから

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異世界から来た美少女トリッパー(何故か美少女と付けたがる。)というのは友達が大好きな夢小説ってのでよく聞く話だけど、まさかわたしが!なんて思わなかったし、誰がなんの目的で物語の主要人物の家になんか送ったんだよ、しかも今のところTCGしかやってないわたしをですよ?!

この世界の神様はどうかしてるわ…
どうせトリップするなら剣と譜術と預言(スコア)のある世界とか、幕末の新選組と鬼の世界とかが良かったよ…


わたしが未だトリップについてうんうん唸りながら考えていると、イケメンさんもとい櫂くんが衝撃的な質問を投げてきた。


「行く宛はあるのか?」

『あ』


的確な疑問は私の胸にストライク!というかクリーンヒットで更に頭を抱える羽目になった。

そうですよねー。

うっかり異世界に来てしまったもんだから、今のわたしは家も金もお友達も無い、着の身着のままな状態のわけでした。


ああ、そう考えるととても怖いことなんじゃないか…自分の居場所に誰かが来たんじゃなく、わたしは独りぼっちで得体のしれない世界に居るのだからどうしようもなく怖くて…物語の主人公達はこんなに怖いことを平然と受け入れられるのは凄いことで……


『…ぅ、えぐ……』


駄目だなぁ、わたしは自分で抱えきれないことが起きたらすぐ泣いてしまう。

ぽろぽろと零れた涙が関を切って溢れそうになって、零すまいと目を瞑ったそのとき。


「心配は要らない。」


櫂くんはわたしの髪をわしわしと撫でて、そう言った。


☆★☆★☆★☆



櫂くんは少し悩んだあとわたしを家に置いてくれる結論に至ったみたいで、わたしを空いてる部屋に案内してくれた。


「好きに使え。寝具は予備がある、要る物があれば言ってくれ。」

『うお…』


なにもない
生活感のない空っぽの部屋。

流石櫂くんなのか流石分譲なのかどちらともなく感心するけどここで一つ疑問。

『櫂くんって一人暮らし?』

「ああ。」

『すごいね!わたしなんかお母さんが居ないとなにもできないよ』

「…そうか。」


そっけなく返される。


「……」

『……』


気まずいなぁ…

やっぱり嫌われてるんじゃないか、あそこで泣いたのは押し付けがましかったのではないか、と少し不安になる。
もう少し会話をと考えているうちにも櫂くんは次の行動に移っていて、わたしが次の話題を持ち出すことは遮られてしまった。


「布団を持ってくる。」

『…あ、待って。』


振り向く櫂くんの視線は未だ怖く感じるけど、臆しちゃ駄目、チャンスはこの時しかないよね!


『お、置いてくれてありがとう…!ふつつかものですがどうかよろしくおねがいしますっ!!』

「ああ。」


ちょっと笑ってくれたのは気のせいではないはずで、櫂くんはいい人だなぁと思ったのであった。




(わたしも手伝う!!)
(おい、ちょっと待…ゴフッ)
(えっあっごめん…うわっ ボフッ)
(……次からは気を付けろ)


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