過去文倉庫

□強がりエゴイスト
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喉が驚くほど渇いていた。
それは声を出すこともままならないくらいに。







「ん…」






目の前の自分の名前が書かれたボトルのキャップを開けて、
中に入っていたスポーツドリンクを渇いた喉に流し込んだ。





冷たいその液体はすごく心地よくて、ボトルの半分も飲んでしまった。







「高木、次撮影だろ?行こ。」




「うん…」





目の前にいるのは光君。明るい茶髪になった彼は少し幼く見える。
こんなこと薮君に言ったら怒られるだろうけど本当に可愛い。






「後もうちょいだなっ、1時間くらいか。」




「そうだね〜」






新曲のPV撮影。
激しいダンスもあるためみんなヘロヘロ。
もちろん俺や光君も。








「あー……マジむかつくー…」




「あぁ…そうだね、」






光君の“むかつく”の対象は薮君。
今日の撮影中ずーっと伊野尾君といて光君を構ってくれていないから。





それは俺も同じ。
伊野尾君と挨拶しか交わしていない。
ずーっと伊野尾君と薮くんはくっついて、今なんか仲よさげにジュースを飲んでいる。








「薮の馬鹿ぁ…」




「光君、行こう?時間ないし、ね?」





「うー……高木は寂しくないのかよぉ?」





「そりゃ…寂しいけどまぁ…しょうがないかなって。」





しょうがない、
薮君と伊野尾君が仲がいいのはファンのみんなも知ってる。
それぐらい仲よくて。
それに同期だし。


だもん、恋人の俺がどうこう言えるようなことじゃないってこと。








それは頭の中では分かってる。
だけど…素直になれない心が“伊野尾君は俺のものなのに”と嘆いている。






「高木、なんか大人になったな。」




「そう?」





「そう。さすが今年大人になるヤツは違うな。」







大人…に見られたいと昔思っていた。
まぁ…それは今もなんだけれど。




光君に言われたのは嬉しかったけれど、言ってるけとと違っている気持ちの自分に少し苛立ちを覚えた。





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