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□略奪愛
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「彼女ができたんだ」
にこっと笑う高木におめでとうと笑ったのは自分だけだった。
みな、凍付いたようになにも言わなかった。
俺と高木は所謂恋人同士だ。
手を繋いだこともキスをしたこともはたまた性行為をしたこともあった。しかし、高木は俺以外にも恋人をつくることをやめなかった。
笑顔で彼女ができたと報告してくるのだ。
それでも俺を愛してくれてるなら、俺は高木の恋人をやめるつもりはない。
自分が馬鹿だという自覚はある。
それでも別れようとしないのはあいつが本当に好きだから。
「伊野ちゃん…なんで笑っていられるの?」
「だって彼女ができたんだぞ?祝ってやるのは当然だろ」
だって高木がこんなに嬉しそうなんだ。
俺も恋人として嬉しさを分かち合いたい。
「ありがと、伊野尾くん」
「いーえ」
「やっぱり大好きだなぁ」
ぎゅっと抱き締め、キスをされる。
ああもう人前じゃするなと言ったのに。
みな、化け物をみたような顔をしている。
裕翔なんかは可哀想と泣いている。
可哀想だよね、俺。
だけど幸せなんだ。
だってこいつに愛してもらっているんだぞ?
Hey!Say!JUMPの高木雄也に。
一番だか二番だかよく分からないけどあいつから愛をもらっている、それだけで相当幸せなんだ。
「伊野尾くん、今日俺ん家来ない?」
「彼女さんはいいのかよ」
「だってー今日は伊野尾くんの気分なんだもん」
「…黙って聞いてりゃ何なんだよお前!」
バシッと音がして薮が高木を殴った。
口の端が切れた高木は痛そうに顔を歪めた。
「なにしてんだよっ薮!」
「…伊野尾は悲しいとか思わねえのかよ。高木にお前浮気されてんだぞ?」
薮に掴まれた右腕が痛い。
なんで薮、怒ってるの?
俺が悪いの?
ねぇ、
「悲しくても俺あいつに愛してもらってるから幸せなんだよ」
「伊野尾…」
「だから、あまりあいつを責めないで?」
薮に腕を引っ張れて楽屋を出てきてしまったから高木が心配でならない。怪我はだいじょうぶか。彼女のところにいってしまわないか。
「薮、俺もう「俺にしろよ」
「え?」
ぐいっと腕を引かれ抱き締められる。
力が強くて苦しくて、高木に申し訳なくて薮から離れようとするもそれができない。
「俺もお前がすきなんだ」
「やぶ…離してよ…っ」
「やだ、あんな奴のところになんか返さねぇから」
略奪愛
end
伊野尾さん病んでる。