After the Rain

□第一話
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外に出るとまだ先程の雨は止んでいなかった。
ザーザーと降っていた。
心のなかが少しくらくなった。仕方なくバックから小さくたたまれた折り畳み傘をとりだした。




傘といっても所詮は折り畳み。
小さいから足がびしょびしょ。







「だから雨は嫌いなんだよ…」





濡れるし、なんか雨ってだけでテンション上がんない。





独り言をぶつぶつ言っても雨は止まないのだけれど。

角を曲がって住宅街に入る。
早く帰りたくて小走りした。








キー………






金属がなにかに擦れたような音がした。
ザーザーと降り続く雨の中、似つかない金属音が。


音がしたほうを振り向くとそこは公園。
公園と言っても小さくて遊具だってぞうの形のすべりだいとシーソー。



そして、ブランコ。
それは金属音を鳴らす犯人だった。
もう9時を回っている。

なのにそこには人が座っていた。







「え…っ大丈夫、ですか?」





僕が話しかけるとその人は顔をあげた。







その顔は端麗で、こんなに綺麗な人に会ったのははじめてかもしれない。
綺麗と言ってもその人は男なのだけど。






「………ゴホッ、ケホッ」




「えっ、ちょ、大丈夫ですかっ?」





彼は言葉を発する前に咳きこんだ。
こんな雨の中傘もささずにいたのだ。
風邪でも引いたのだろうか。






「えっと…うちは?風邪引いてるだろうし帰った方がいいんじゃないですか?」




そう言って傘のなかに彼をいれた。






「家…、ない」





「えっ?」






この歳でホームレス?!なんて馬鹿なこと考えてると彼はバタンと倒れてしまった。






「えっ…大丈夫ですか!」





力無く倒れてしまった彼を頬っておけるほど冷たくない僕は彼をどうすることもできず、家がすぐ近くだったこともあり運んだ。







****************







お母さんはびっくりしていたけれど、彼を家にいれてくれた。





「誰なの?この人」




「えっ…えぇっとー…」




「まぁ、いいけどね。熱があるのかしら。お布団敷いてくるわね。」





お母さんは、はい、とバスタオルを渡してくれた。彼の服や髪を拭いてやる。






なんでこんなことしてるんだろう。
少しだけ疑問になりながら濡れた髪を拭いた。







*
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