After the Rain

□第六話
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「と…、ゆ、と……裕翔?裕翔!?」





「ん…」




目が覚めると少し目が痛かった。
昨夜泣いたからだろうか。
僕の名前をたくさん呼んだ伊野ちゃんは少し心配そうな顔をしていた。






「大丈夫…?」



「え…??」




「うなされたから、」






確かに汗がすごい。
嫌な夢だった。
伊野ちゃんが………消えちゃう夢。
バイバイっていって消えちゃう夢。






「嫌な夢見ただけ…」




「大丈夫…?すごい汗」




白いその指が僕の少し汗ばんだ首筋に触れた。






「ふふっ、冬だっていうのにすっごい汗。」




「だって…怖かったんだもん、」





「裕翔かわい〜っ、どんな夢見たの?」



「ん……伊野…ちゃんが居なくなっちゃう夢」





僕がそう言うと伊野ちゃんの肩がぴくんと反応した。
少しだけ震えているような気がした。






「伊野ちゃん?」



「…え?………ふふっ、居なくなるはずないでしょ?」





伊野ちゃんは親が子にするように頭を擦ってくれた。
頭にふわりふわりと落ちるそれはすごく心地よかった。











――――――――本当に伊野ちゃんは僕の恋人だったのだろうか―――――――…………









「伊野ちゃん…」




「なに?」




「な、なんでもなぃ…」





やっぱり『伊野ちゃんは僕の恋人なの?』なんて聞けるはずもなくて。






「なんだよ〜」



「なんでもなーいっ」







恋人なのかは分からなかったけど、こんな人が恋人だったらいいなぁなんてちょっと思ってみた。





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