After the Rain

□第七話
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『え……裕翔?』




「だから伊野ちゃんのことが好きなんだ…っ」





人生最大っていいくらいの勇気を振り絞った。
好きだということを伝えなきゃいけない、そんな気がした。





『それって……』




「告白、のつもり…」






携帯電話という金属の塊を通じての会話だっていうのに、心臓のバクバクが聞こえたらどうしようかと思った。

それくらい心臓がフル活動していた。






『じゃあ……俺のこと…思い出してくれたってことなの…?』




「………いや、」






正直、何も思い出してないっていうのが今の状況であって。

会って一週間ほどの伊野ちゃんしか知らない。







『そっか…、うん、』







向かえてしまった長い長い沈黙。
吐きそうになるくらいの重圧に絶えきれなくて僕は逃げてしまった。







「ごめん…、これから電車乗るから…」




『あ……うん…、』






電話を切ると何とも言えない感情に潰された。


どうして伝えてしまったのだという後悔が過去の自分を一斉攻撃しだした。

ギュッと心をなにかに掴まれたような感覚は初めてで泣きたくなって。
深く帽子をかぶった。







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