After the Rain

□第八話
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「雨…」








―――雨が止んでしまうから――







雨が止む、それがどうしたのだろうか。

雨はいずれ止む。
それは今ニュースの話題になっている『一ヵ月ずっと止まない雨』でもである。



どうしてそれほどまで雨を気にするのかが分からない。







「雨……」





何度も言ったが雨は嫌いだ。
でもこれほどまでに雨を嫌いになったことはないだろう。








「………ふ、ぅ…っ、」




なんだか雨に伊野ちゃんをとられた感じがした。
どうしようもなく好きな人をどうしようもないものにとられた。





窓の外は雨。
僕は家の中、涙を流した。







あぁ…雨なんか止めばいい。
雨なんかなくなっちゃえばいい。








雨がなくなったら伊野ちゃんは泣くのかな…。
雨は伊野ちゃんの何なのかな…。








ぐるぐる、渦を巻く感情に体はくたくただった。






「………はぁ…」





ちょっと外にでてみようか。




そう思ったのは気まぐれ。
猫レベルの気まぐれ。




風邪もよくなってきたことだし。
撮影は今から合流できないけどちょっと遊びに行こうかと思った。







「もしもし、圭人?」




『あっ、裕翔?風邪大丈夫??』





圭人のふんわり声はやはり癒される。
僕にとって可愛くてしょうがないのだ。





「よくなったよ。だから今からそっち遊びに行きたいなぁって」




『無理しちゃダメだよ?』




「分かってるよ〜」




『じゃあ待ってるっ』






携帯電話を切るとすぐに着替えた。






「あたっ、」




タンスに小指をぶつけた。痛いけど、早くみんなに会いたくていそいで靴下を履いた。









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