After the Rain

□第九話
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雨はもう止む気配すら見せなくなった。
灰色の天上が低い空はずっと泣いている。


ニュースでは農作物への影響が申告だと訴えていた。
ニュースのあとのコマーシャルのチープな音が耳を掠めた。


窓には弟がつくったてるてるぼうず。
ペンで描かれた可愛らしい顔は少し滲んでいた。







伊野ちゃんに告白して早くも三日が経つ。
彼は薮くんと付き合っているらしい。

それはどうしようもない出来事で、ただただ応援するしかない。









でも、、、












「もしも―――――」





僕が記憶を取り戻したのなら、

伊野ちゃんは戻ってきてくれるかもしれない。







いくらなんでもプラス思考だろうか。

うぅん。こんなもんでしょ。









昔、僕と伊野ちゃんとの間になにがあったんだろう…。

幸せ、だったであろうそのときはなぜ消えてしまったのか…。




とか、分かりたいことはたくさんあった。
というか全て、だった。







「それでなんで俺呼んだの?」




「やっぱ、山ちゃんなら…隠したりとかしないかなぁって、」





隠すって何を、と山ちゃんは軽く笑った。

確かに何ってかんじ。
だけどどこかみんな何かを隠している気がしたんだ。







「伊野ちゃんのことねー…」




「………うん」




「まぁ確実なのは伊野ちゃんは薮くんとは付き合ってないと思う」




「えっ?」




「だって薮くんには光くんっていう恋人がいるでしょーが」






確かに言われてみればそうだ。
薮くんと光くんといえばみんな認めているカップルだ。



伊野ちゃんと薮くんが付き合うはずない。








「じゃあ…なんで伊野ちゃん嘘なんか…」



「さぁ。伊野ちゃんって結構嘘つくからね。また気まぐれな嘘じゃない?」








気まぐれな嘘つくために人って泣くものだろうか。

いや…………









やっぱり…なにか隠しているのか。







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