イベント*企画

□HappyValentine
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〇裕慧






「はいっバレンタインチョコ」




「あ…ありがとう」





裕翔から渡されたバレンタインチョコで初めて今日がバレンタインだってことに気付いた。

あげようかなとは思っていたけどまさか今日だとは思ってなかった。
可愛らしくラッピングされた箱の中には小さなチョコがいくつか入っていた。





「味は手作りだから保障しないよっ」




「美味しいよ?ありがとう」





「どういたしましてっ」





満足したらしい裕翔は一足先に帰った。

今更ながら自分の阿呆さにあきれた。
なんで今日って気付かなかったんだろう。
なんか裕翔可哀想じゃん。





「はぁー」




「おっ、伊野尾君ちょこだー」




「伊野尾君はちょこじゃないぞー」





高木がぴょこんと後ろから顔を出した。
そんな高木の腕の中にも可愛らしくラッピングされた箱があった。






「高木も誰かからもらったんだ?」




「うん、まぁね。知念がくれたっ」




「えぇっ知念が?」





あいつだけは作るはずないって思ったりしてたのに。
なんか俺も作らなきゃいけないって気持ちになる。





「え…、ぐちゃぐちゃ」



「いいのっ知念が作ってくれたんだもん。例え毒が入ってても食べる」





高木の一途さに関心した自分がいた。






。。。







「ちょこなー…」




チョコなんか簡単!
って思ってた俺が馬鹿なんだよな。



何故焦げる?
何故固まらない?
何故不気味な味になる?




こんなの裕翔にあげられない。
てかたぶんお腹壊すと思う。





なんで市販のチョコを溶かしてトリュフにするだけなのに不気味な味になるんだろうか。






「でもあげないってのもなぁー…」





ちょっとした意地だけど俺は2月14日のうちに裕翔に渡したい。

そんなの簡単だと思って1時間前に裕翔を呼んでしまったんだ。
約束の時間まであと15分。



どう考えても作り直す時間はない。
こんな石ころみたいな形のチョコ(匂いは漬物みたいな)を渡すしかないんだ。







チャイムが鳴った。
玄関に行くと予想通り裕翔で。
おじゃましますと言った裕翔の頭の上には雪が乗っていた。






「雪、降ってた?」




「うんっ、すごい降ってるんだよ」





チョコ作りに夢中で気付かなかった。




「えっとー…裕翔ぉ」




「なに?」




「これ…バレンタインチョコなんだけどー」




お皿に乗った有り得ないチョコを見せる。
変な匂いもするし何より石ころみたいに固いし真っ黒。






「ありがとっ伊野ちゃん」



「えっ…こんな失敗作でいいの?」




「もちろん。伊野ちゃんが作ってくれたんだもん。嬉しいよっ」





パクリと食べた裕翔は笑顔で美味しいよって言ってくれた。
絶対美味しいはずないのに。









そんな君の優しさが、





嬉しいんだよね。





次の日腹痛で休んだのはたぶん…俺のせい。










end

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