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□世界で1番嫌いな私を好いている貴方が世界で1番好き。
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病み慧







鏡が嫌いだった。
大嫌いな自分をうつすそいつを何枚壊したことか。
テレビが雑誌が、写真が嫌いだった。
自分をみんなに見せるから。
そと、が嫌いだった。
大嫌いな自分を他人に見られるのが嫌だった。
苦しかった。
生きているのが。
分からなかった。
自分の何処が嫌いなのか。
そして何より怖かった。
みんなが自分を嫌っているのではないかって。
妄想してしまう。
笑顔が怖かった。
笑い声が怖かった。
影で笑われている。
きっとあいつらが言っている悪口は自分のことなんだって思うと足がガクガクと震えた。
大嫌いだった。
自分が。


「伊野尾、俺お前のこと好きなんだ」


薮にも嫌われているんだと思って絶望した。
分かっていたはずなのに。
きっとからかわれている。
何かの罰ゲーム?
そりゃ可哀想だね。


「な、何とか言えよ。頑張ったんだから俺」


肩を掴まれて揺らされる。
必死な顔。
必死な声。
自分みたいな最低な奴が恋などしてはいけなかったんだ。


「好きなんだって、お前のこと。冗談なんかじゃないから、付き合ってくれないか?」

「……薮はさ、死にたいって思ったことない?」


薮はさっきの言動が嘘のようにぴたりと動きを止めた。
きっとないだろうね。
薮は人気者だから。



「俺はね、いつもそう思っているから。俺なんか死んでしまえばいいって。」


「伊野尾…」


「世界で1番俺が嫌いなんだ。死ねばいいって思ってるから。こんな最低な奴と薮は居ちゃ駄目だよ。」



好きなひとには幸せになってほしいから。
俺なんかと居たら薮まで汚れてしまう。
大嫌いな俺と薮が一緒にいると考えるだけで俺を殺したくなる。



「あんさ、俺本当に伊野尾のことすきなんだ」


「だから薮、」


「だからお前を許さない」


「…え?」


「俺の世界で1番好きな奴を殺したいなんて言う奴は許さない」



腕を引かれて抱き締められると泣きたくなった。初めて触れるひとの熱がこんなにも優しくて温かかったから。



「許さないから、離さない」


「や、ぶ…っ」


「俺が幸せにしてやるから。だから、死にたいなんて言うんじゃねえよ」

「うん…っ」


「頑張らなくていいから、生きててくれれば側にいてくれればそれで十分だから」


初めてひとがいるまえで泣いた。
止まらなくて、でも薮が泣いて良いよっていってくれて。
初めてこんなに人をすきになった。
初めて頑張らなくていいなんて微笑んでもらった。
初めて愛しいと思った。



「絶対伊野尾が自分に自信を持てるようにしてやるから、だから俺と一緒に居ろよ」


繋がれた温もりに小さく頷いた。





世界で1番嫌いな私を好いている貴方が世界で1番好き。



俺は世界で一番
自分が嫌いだ。
そして自分を好いてくれている薮が世界で一番好きだ。
薮が愛している、愛された自分がすきだ。


「伊野尾、手繋いでいい?」


「うん、勿論」












end
前に生徒会について悩みをサイトの皆様に聞いてもらい元気を貰えたことが私の何よりもの宝物です。
だから、もしサイトに来てくださっている皆様の中に自分に自信がなかったり悲しい気持ちになっているひとに元気になってもらえたならと思いこの話を書かせていただきました。
大好きな皆様が少しでも喜んでくださったり楽しかったと思えるような小説を不器用ながら作っていこうと思います。

なんだか少し堅苦しい文になってしまいました(・ω・`)




そら

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