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□無責任ヒーローのプレゼント
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真夏に二度のコンサートというのはあまりにも酷な話だ。
偽りなく楽しいのだがこうもキツいと弱音をこぼしたくなるものだ。
ただ、自分が弱音を吐けばみなたぶん弱音を吐くだろう。
それで、ずーんと重い空気になるのは避けたかった。
だからなるだけ笑顔でいることを選んだ。
元気だけが取り柄だと自分で自覚しているから、自分の笑顔で元気を出してくれるならと無理矢理笑顔を作っていたのもまた事実。
「疲れたー、帰りたーい、あと一公演嫌だぁー」
そんな僕と正反対の人間が伊野ちゃんだ。
本音をぶちまけるなんとも滑稽な勇気を持った彼はあまり人との関わりを好いていないのだと思う。
そりゃ、仲はいいけれど伊野ちゃんはBESTメンバーだけにしか心を開いていない。
さっきの愚痴爆弾だって大ちゃんに向かって放ったもの。
大ちゃんは笑いながら俺もーと言って伊野ちゃんの隣りに座った。
このひとの凄いところは愚痴を零しても零された相手は本音を出すが笑顔になるというところだ。
そんな伊野ちゃんが正直羨ましかった。
自分もそんな風になりたいと思ったしもっと仲良くなって自分にも彼が心を開いてくれたらとも密かに思った。
だから、自分から進んで絡みに行った。
基本適当で嘘つきだけど優しいひとだから話を聞いてくれる。
ただ、BESTのみんなといるときとは少し違うような気がした。
勘だから確証なんてものは微塵たりともないが、なんとなく見えない壁があった気がした。
ちょっと悲しかったのはもう彼の存在が特別になっていたからだ。
寝ている彼の髪をくるくると指に巻き付けて遊ぶことが俺のマイブームとなった。
中世的な目鼻がくっきりとした綺麗な顔をしている。
少しふっくらとした赤い唇をつつっと指で這わせると長い睫毛が動いた。
「ん、裕翔…」
「ごめん、起こしちゃったね」
彼に近付いて分かったことの一つに寝起きが大ちゃんの次くらいに悪いという項目がある。
頭を撫でてやるとすりすりと擦り付けてきた。
「あ、迷惑かなぁ?」
「ん…気持ちい…、やめないで」
その瞬間心臓が高鳴った。
すりすりしてくる伊野ちゃん。
本音を零してくれたことが嬉しくて嬉しくて、眠そうな伊野ちゃんに抱き着いた。
「うおっ!?裕翔」
「嬉しい!伊野ちゃんのこともっと好きになったよ」
「え、あ…好きだったんだ?」
「うん、好きだよ」
頭を撫でるとその手を優しく掴まれて伊野ちゃんの顔まで移動させられた。
頬にすりすりとしてきた伊野ちゃんに顔が赤くなる。
「遅ぇんだよ、馬鹿裕翔」
「伊野ちゃ、」
「ハッピーバースデー、好きだよ裕翔」
「な、」
「あーさっき思い出したからプレゼント買ってないんで。仕事終わったら買いにいこうか。」
適当に言った伊野ちゃんが愛しくて無理矢理搾り出した笑顔じゃない、本当の笑顔で頷いた。
無責任ヒーローのプレゼント
それは、
ゆるーいキャラクターのぬいぐるみ(UFOキャッチャー)と、
君との甘い関係。
end
伊野尾さんは正真正銘の無責任ヒーローだと思います。
中伊なのか伊中なのか微妙な…
うん、まあいいか。
ハッピーバースデー裕翔さん、今からさまりぃで会いにいくよー^^