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□アイアムエゴイスト。
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俺は専門学校に通いながらバイトをしてまたまた有意義な生活を送っていた。
薮は隣りの部屋を借りている。
慧ちゃんと高木は同じ部屋に。
卒業して二年、慧ちゃんと高木は結ばれた。
初めかなり驚いたけど仲良さげなこいつらをみて俺も薮も素直に喜べたし同性愛を否定しようとは思わなくなった。
バイト終わりで深夜0時。
駅に行く道を歩いていると不良のような集団があるいてきた。
俺は咄嗟に避けた。
しかし彼等に腕を引かれていた少年を見て絶句した。
「有岡…」
有岡が振り向いた。
目を大きく見開いたあとまた彼等と一緒に歩き出した。
うちに帰ると底知れぬ怒りが込み上げて来た。
あいつは俺が好きだといった。
なんで他の奴等とヤるのだろうか。
彼等が向かったホテル街が異様に頭から離れない。
苛々して慧ちゃんちに遊びにいった。
慧ちゃんは優しいから何でも聞いてくれる。
ああ確か花火大会のあと俺に有岡に謝りなさいと言っていたっけ。
「有岡が?ふうん、有岡は大学一緒だけど変なのと関わっていないと思うなあ」
「え、有岡と仲良いの?」
「ほどほどに、選択した科が同じなんだ。」
何故だろうか、慧ちゃんが有岡と仲がいいと分かったらまた苛々してきた。
俺はどうかしている。
「有岡に電話してみよっか」
「へ?」
「なんか言いたいことあるんでしょ?この間一緒にご飯食べた時に番号とアドレス教えてもらったから」
携帯を取り出して慧ちゃんが笑顔で話す。
有岡もまた笑顔で話をしているのだろうか。
「ひーかる、駅に来てくれるって。本当に光が誘ってるって言わなくてよかったの?」
「言ったらあいつはこない」
部屋から駅まで徒歩三分なわけで一時集合だがうちを5分前にでた。
待ち合わせ場所に有岡はいた。
あのころと変わらない。
「有岡」
「…っ!」
「ちょ、」
逃げようとした有岡の腕を掴むといやいやするように暴れられた。
「有岡…っ」
「意味分かんない!なんでまた来るんだよ!」
「お前に言いたいことあって」
「もうやだ…っ!八乙女君には会いたくなかったよ…」
「お前、なんで俺に告っといて他の奴等とヤってるわけ。なんでだよ、俺がようやくお前のこと向き合おうと思ったのに裏切るんだよ」
有岡は涙を溜めた瞳で俺を睨んだ。
噛み締めた唇からは血が流れた。
「…だいっきらい」
「は?」
「なに自分が傷ついたみたいな言い方。傷ついたのはあんたばかりじゃないんだよ!なんで…なんであんたそんなこと言えるの…?なんで、なんで」
俺に寄り掛かった有岡は動かなくなった。
ただ一言気持ち悪いと真っ青な顔で言った。
有岡を俺の部屋に入れて寝かせ水を飲ませると顔色はよくなってきた。
「大丈夫か」
「…昨日ヤられすぎたから。具合が悪いんだ」
「お前、なんでそんなに抱かれんだよ」
「…寂しいんだ」
有岡は瞼を閉じた。
長い睫毛はぱさりと音がしそうだ。
「…俺ねまだ八乙女君のこと好きだよ、でも諦めなきゃいけないって分かってた。でも寂しくて。だから抱かれたんだ」
「…有岡」
「身体を差し出すとね仲間ができるんだ。…独りは怖いから、だから」
涙を流す有岡をきゅっと抱き締めた。
「ごめん、俺もすきだ」
「…八乙女君は狡い、俺だけぐちゃぐちゃになっていく。なのに俺は八乙女君を憎めないんだ…」
「ん、卑怯だと分かってる。だけど有岡が欲しいから、ねえあの時の告白の返事を反対にしてくれないか?」
「……うん、いいよ」
卒業の日、しなかった口づけを血が滲んだ唇にそっと落とした。
アイアムエゴイスト。
俺は狡い。
卑怯な人間だ。
「八乙女君、ありがとう」
だけど有岡は
笑うんだ、
俺が好きだと言って。
それが愛しくてしかたない。
end
シリアス挑戦。
薮ちゃんがあんなまでにあーりぃを嫌っていた理由は薮ちゃんが光さんのことを好きだったから。