After the Rain
□第六話
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「じゃあ、またね」
「うん、またねっ」
手を振ると伊野ちゃんも振かえしてくれた。
なんでかな、
物凄くどくんどくん胸が高鳴っている。
それもちょっと痛いくらいに…
そっと朝撫でてもらった髪に触れる。
温かくて細くて髪を絡めるた指。
もしかして…―――?
いや…でも
どうしようもないことをどうもできないのに、
自問自答を繰り返した。
「……伊野…ちゃん、」
名前を呼ぶとまたどくんどくん胸が跳ねた。
どくんどくんよりもズキンズキンかもしれない。
それくらい胸が痛い。
もしも、本当に過去の自分が伊野ちゃんと付き合っていたならば…
この気持ちはやっぱり今の答え正解なのだろう。
「あ…もしもし、伊野ちゃん…?」
『なに?裕翔』
電話越しに聞こえる伊野ちゃんの声。
透き通ったその声はたった10分ほど前に聞いたばかりなのに妙に懐かしいのは自分でも分からない。
*