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□あるカップルができるまで
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※付き合う前。





恋人、という響きを意識するようになったのはいつからだったか。
幼馴染みのような伊野ちゃんは年上で先輩だというのに同じ目線でいつも接してくれる大切な友達でありメンバーだ。

ベタベタくっついてくるし、嘘つきだし気分屋気まぐれ。
終始、修学旅行のようなノリで伊野ちゃんとはいつも接する。二人とも子供全開。

そんな伊野ちゃんとつい先日口づけをした。
お付き合いをしてちゅう、なんて綺麗な恋愛背景はない。

恋愛ドラマを二人で見ていたとき、ふと少女と少年のキスシーンにさしかかったのだ。
思わず目を逸らし、じゃむとあんと戯れていると伊野ちゃんが沈黙を破ったのだ。


『俺、大ちゃんならイケるかもしれない』



勿論意味が分からないので伊野ちゃんをジッと見つめる。
伊野ちゃんはいくよと言ってから俺の後頭部に手をまわしぐいっと引き寄せた。
自然と触れた唇、身体は硬直し半開きになったままの唇の間から舌が滑り込まれた。
温かいそれが俺の舌を吸ったり、絡めたり。
訳の分からぬまま唇は離れていった。
俺と伊野ちゃんを結んだ銀色の糸はすぐにだまになって切れた。
あまりの驚きに身体はすぐに動かなかった、何か言う伊野ちゃんの声すら聞こえなかった。



あれから、一週間。
何も起きぬまま普通の毎日を送っている。
あのとき伊野ちゃんは調子に乗りすぎたと謝った。
俺はよく分からぬままに大丈夫だと慰めた。

その日、泊まれるわけもなくすぐに帰り今に至る。
幸い、仕事もなく伊野ちゃんと顔を合わせなくて済む。

しかし一人の今考えるのは一つだけ。
友達だと思ってた伊野ちゃんにされたこと。

少し厚い唇、
柔らかく温かい舌、
抱き寄せるとき意外にも力があったこと。
自然と顔が熱くなる。

『大ちゃんならイケるかもしれない』
でも伊野ちゃんはきっとその程度なんだ。
イケるかも、いつものノリじゃないか。
恐いもの知らずの子供。好奇心は時に罪になる。悲しいくらいに戸惑う気持ち、携帯電話をつかえば十秒でつながるというのに。


芽生えてしまった新しい感情。
それは明らかに『好き』の感情。
辛い、辛い。


三日に一度の頻度で互いの家に泊まりあっていたのに。
近付いた瞬間、遠のいた友達。



『イケるかもしれない』が『好きだよ』だったならば。


ふと鳴った携帯電話に伊野ちゃんの番号は表示されなかった。
代わりに見慣れた名前。


「もしもし、」


『もしもし、大ちゃん?』


「うん、」



見慣れた名前の主。
八乙女光はいつもより明るい声音だった。
後ろの音は五月蠅い、サッカー中継のテレビの音だ。
イコール、そこは薮君の家だろう。



『ちょい待ってて』



そう言われ耳に携帯をつけたまま待つ。
ガヤガヤ聞こえるテレビ。
応援する薮君の声。
そして、


『やだよ、やめろっ…光がかけたんだろ!』


『だってー伊野ちゃんが大ちゃんの声久し振りに聞きたいーっていうからー』


『い、言ってない!聞きたくなんかない!』


『そんな顔してたの!』



馬鹿みたいなやり取り。携帯電話を耳から離す直前、伊野ちゃんがもしもしと言ったのが聞こえた。



「……俺の声…、聞きたくないんだろ…ふざけんな…ッ!」



最後に叫ぶと電話を切った。
簡単に言うと傷ついた。涙がでてきた。
『イケるかもしれない』その彼の予想はきっと外れたんだ。
『無理』な部類だったんだ…俺。
実験台にされたんだ。
キスできる限界を知るための。
その証拠に俺は友達ランクから声も聞きたくないランクまで下がったわけだ。



「ふざけんな…っ、勝手すぎる…」



灰色のパーカーに涙は黒い染みを作っていった。そして鳴り止まない携帯電話を思いきりベッドに投げつけた。
その拍子に外れた電池パック。
それを無視して小さく床に丸まった。



沢山いるなかの一人の友達を、
たった一人だけの好きな人を、
失った悲しさで正常に笑えない。

スケジュール表、明日は撮影。
スケジュール表をビリビリに破くと窓から捨てた。



『笑顔じゃないの?大ちゃんのチャームポイント』


一か月前、雑誌の取材で自分のチャームポイントを聞かれ困っているとにこりと笑って言った伊野ちゃん。
なんだか顔が熱くなったんだ。

本当はずっとずっと前から伊野ちゃんのこと、好きだったのかもしれない。



ガチャリ、と音がなって扉が開いた。
お母さんだと思い目を擦って起き上がるとそこには頭を支配していた彼がいた。



「え…、あ…っ」



「…、」



伊野ちゃんは何も言わずに俺を抱き締めた。
ぎゅうぎゅうに、苦しくて苦しくてたまらない。
ふと伊野ちゃんの頬が濡れていることに気付いた。



「ごめん…、」



そう呟いて離れた伊野ちゃんはやはり泣いていた。
何年も一緒にいるが泣き顔を見るのは初めてだった。



「な、なんで…謝るの」


「だって、だって…怒ってる大ちゃん初めてで…」



「…うん」



「…そんなに俺にキスされたの、嫌だったんかなあって思って…情けなくて…」



一週間ぶりの伊野ちゃんはなんだか少し痩せたようにみえた。
それはきっと錯覚。
彼がとても弱っているから。



「人生で初めて告白したのに…フられちゃうし、俺情けなくて…」


「え?だ…れに」


「えって…大ちゃんに決まってるでしょ」



伊野ちゃんの話からするとこうだ。
キスをしてすぐ伊野ちゃんは俺に好きだと告白をしたらしい。
しかし俺は何がなんだか分からず固まったまま。仕方なく謝ったところ、うわずった声で大丈夫だと言われた。
そして俺は家に帰ってしまった、らしい。



「告白…、俺に…」


「うん…、実は何年も前から好きだったって言ったんだけど…、」



「し、知らなかった」



伊野ちゃんはちーんと鼻をかんでから涙を拭った。
俺はもう一度彼に抱き着いた。



「だいちゃ、」



「…告白の答え、俺も好きなんだ」
















あるカップルができるまで










「大ちゃん、ちゅうしてくれなきゃ俺死んじゃうー」



「…死ねば?」



「ひっどー」



今なら笑ってその話ができる。
あれから3か月。
順調に恋人街道まっしぐら。




「ねえー大ちゃんー」



「分かったよ、しょうがないなあ…」



「やった!」














end
ジャニーズウェブの
大ちゃんの『P.S.伊野ちゃんへ

最近、親知らずを抜いたらしいですね
痛かっただろうに
報告受けた時、たいしたリアクション出来なくてゴメンね

ただ…

デジカメに入ってる俺の写真を見て1人でニヤけるのやめて下さい

こんなこと言いたくないけど正直いうと少し怖いです((((;゜Д゜)))』

を読んでテンション上がってかいた。

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