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□雨夢楼
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ボカロ『雨夢楼』曲パロ。※暗いよ、一般人パロ
――――――






土砂降りの雨、
空は黒く日の光はほとんど届かなかった。
傘を差すこともせず、
靴を履くこともせず、
裸足で去りゆく大切なひとを追った、十年前の今日。



…――迎えに行くから


――待ってて…



大切なひとは幼い自分にそう囁いた。
土砂降りの雨、只でさえ小さな声は雨に吸い込まれる直前俺の耳に入った。



―――嫌だ…!

嫌だ…!独りにしないで!

……嫌だ!行かないで!――



涙と雨が混ざり混ぜられ、大切なひとの服を掴んだ。
大切なひとはごめんねと頭を撫でた。

自分より足の長い大切なひとの足幅は大きく幼子の自分は追いつけない。


――おいてかないで!!



転んだ幼子。
膝から血が出て雨はそれを溶かした。
大切なひとは振り向かなかった。











「伊野ちゃんっ」


「大丈夫?光」



十年の月日の間で恋人ができた。
大切なひとはそれっきり現れず、今ではよく顔も分からない。
只、いまは幸せだ。



あれから街も変わった。光と歩く街は人がごった返している。
光と二人で傘をさしそこを歩くのは容易なことではない。



「わ、」


「あ、すいません」



土砂降りのなかぶつかった肩と肩。
思わず出た謝罪の言葉。



「伊野ちゃん大丈夫か?」



「ああ光は?」



心配した光に大丈夫だと告げる。
ほっとしたように微笑む光。
先程の男もいってしまったらしい。

それにしても人が多すぎる。
人と人を掻き分けてしかも傘をさして。

ああ、あの日も雨だったと思い出す。
ああ、あの人はどこにいるの?


―迎えにくるんだろう?


コンビニについて傘を閉じた。
酷い雨だ。
目の前すら見えづらい。


「光、大丈夫か?」



雨はより一層酷くなる。春は天気が変わりやすいから仕方ないのだが。


「光?」


ザ――――


降り続く雨、
コンビニからでてきたカップルの甘い会話。


ザ―――




「光…、光――!」



先程の人ごみのなかを掻き分ける。



「光―光―――ッ!」






―――迎えにいくから



待ってて――――




「光…っ、光―――!」




―――嫌だ…!

嫌だ…!独りにしないで!

……嫌だ!行かないで!――





「光…、光――――!」




―――迎えにいくから





「光――ッ!」




―――待ってて





「嫌だ…っ、嫌だ…光!」





―――迎えにいくから





「嫌だ、光…光?」





―――ムカエニイクカラ





「光―――ッ!!」






――――――マッテテ





























『ねえ、宏太兄ちゃん』


『なんだ?慧』




『お兄ちゃん僕とずっと一緒にいてくれる?』



『ああ、勿論だ』










―――嫌だ…!

嫌だ…!独りにしないで!

……嫌だ!行かないで!――






『お兄ちゃん!嫌だ!お兄ちゃん!』




『ごめん…』














――――迎えにいくから




待ってて―――























「光――――ッ!」












雨夢楼






ザ――――――ッ






















end
ボカロ『雨夢楼』の曲パロ。
暗い…。
ちなみに伊野ちゃんと光は二度と会えない。
大切な人、薮とも伊野ちゃんは二度と会えない。


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