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※学パロ





高校生なんてのんきな奴等だって兄が言う。
しかし高校生だって悩みくらいあるのだ。
屋上に寝そべり流れゆく雲を眺める、
夏の入道雲は俺の悩みより全然大きくて、自分の存在が小さく感じる。


「だーいきっ」


「うおぉ!?」


バシャーンと水をかけられ、起き上がるとにやにやしているあいつらがいた。
バケツを持っているのは宏太、メロンパンを囓っているのは雄也、教科書の束を持っているのが光。
どうやら首謀者は宏太のようである。



「大貴がお昼先に行っちゃうから悪いんだかんなー」


「だからってぶっかけんな阿呆宏太!」


「ふふん、就職クラスのお前に言われたくないね。ねえ光ちゃん」


「あ、今のタイミングで俺に振るのかよ」


「光は頭良いけど、宏太てめえは就職クラスだろうが!」



光は国立大学進学クラスである。
所謂できるクラス。
俺はというと就職クラスである。
この不況時代だってのに就職できっこない。
宏太や雄也も就職クラスだがこいつらはサッカーで大学推薦なんて道もあるのだ。
俺にはそれがない。
何もない、ただの男子高校生。
道が、ない。



「まあまあ、大貴もメロンパン食べる?」


「…食べる」



うちの購買特製メロンパンは中に生クリームが入っており、かなり美味い。
ぼろぼろとカスが落ちるがご愛嬌。


「だーいき、そんな怒んなよー」


「馬鹿宏太…制服びっちょりだ」


「あ、部室に俺のもう一枚ワイシャツあるぜ?」

「やだ!サッカー部の部室くせえじゃんか!」


「うわ、ひど!」



濡れたワイシャツを絞り、金網に引っ掛けた。
真夏日、5時限には間に合うだろう。



「うわっ、大貴ぽにょ」

「う、うるせえ!馬鹿宏太」


「へへん!」


「宏太、いい加減大貴をからかうのやめな。怒るからな」


「ごめん、光。もうからかわない」


「なにその変わり様!?」


宏太は異様に光に懐いている。
なんでも幼馴染みだとか。



「大貴、」


「なに雄也」


「なんかさあ、いつまでもこのまんまがいいって思わない?」


「…そうだな、このまま馬鹿やっていたい」






そんな、
馬鹿な平凡な毎日が
変わろうとしているなんて、




「うりゃ!」


「うお!?宏太てめえまた水かけやがったな!!」




誰も知る由もなかったんだ。

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