文倉庫1

□すのう、どろっぷす。
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少し深爪した人先指にぐるりと絆創膏を貼った。
そのまま手袋をするとくすぐったかったが我慢してもう片方の手にも手袋をはめた。
ドアを開けると真っ白で極薄いけれど夜中に降っていたのであろう初雪に胸を踊らせた。
サク、サクと心地良い雪を踏む音。


「起きてたのかーひかる」

「うん、雪が降ったんだ。」

「子供だなあ、光は」

「うるさいっての」



昨晩薮の家に泊まり、何を思ったか早起きをしてしまった俺は窓を開けた外の世界の色にテンションを上げられて薮のマフラーと手袋を奪い外にでてきたのだ。
まだ眠そうな薮はひとつ欠伸をした。
薄い薄い雪の層をかき集めて小さな玉を作ると締まり気のない寝ぼけ顔にぶつけた。


「うお!?」

「俺を馬鹿にした罰だからなっ」

「やったなあー覚悟しろーっ」



いきなり覆い被ってきたと思ったら、こしょこしょとくすぐられる。


「や、ばかっ!うあっ」

「光が悪いんだぞ、冷たかったんだからな」

「うー、くっそ。ごめんなさいっ」




やっと解放されたと思ったらまたとすんと胸に収められる俺。
なんなんだと薮を見ると大層な心地良い笑顔を向けられた。
朝露も凍るほどの寒さは容易に氷点下を下回っているだろうに俺がいま収まっている此所はほんわり温かでまるで春の陽気に包まれた安らぎと似ている。
きゅっと掴まれた右手、力強いから深爪した人差し指がぴりぴりと痛んだから足を踏んでやる。


「…なんだよ、やぶ」

「んー、なんか可愛いから捕まえたくなった」

「逃げ出してやる」

「そうしたらまた捕まえるから」



ほら、馬鹿野郎。
登校途中の小学生が不思議そうに見ているだろう。
だけど薮の腕を振り払うほどの力はないし、あったとしても温もりが心地良くて振り払うことなどできなかった。
ふと、鼻に冷たい感覚。
雪だと分かるとまた嬉しくなって薮に腕をまわした。



「薮の手冷たい」

「誰かさんが俺の手袋盗っちゃったからな」

「返す気はないけど」

「ああそうかよ」


薮の手を掴むとはあーっと息をはきかけた。
息も白に染まり、ほんのり温かであろう息が薮の氷のように冷たい手を包んだ。



「あーもう、」

「なんだよ、薮」

「無自覚ってタチ悪いよ、マジで」


だいぶ、強くなった雪は世界を白だけにしてゆく。
その冷えた世界で唇に触れた熱は柔らかくて、こそばゆかった。








すのう、どろっぷす。




無味無臭のはずの雪は、
甘かった














end
77777御礼小説。
甘めの薮光とのことでイチャラブ薮光を…。
端から見たら呆れそうなことを彼等はやってしまいました←

ココ様!
リクエストありがとうございました!
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またのご来店おまちしております。

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