文倉庫1
□11文字の伝言
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誕生日だけどシリアスというか切ないというか。
薮ちゃんが入院している設定
「ほれ、」
「ん?」
「プレゼント、20歳だろ。おまえ」
ラッピングされたそれをふいに渡されて、少し恥ずかしくなってからありがとうと言った。
「外出禁止だから、兄貴に買ってきてもらったんだ」
「ありがとな、薮」
色んな管をぶら下げた薮はアイドルとして華やかだったあの時と比べて、すごく痩せている。
顔色も青白く、だけれど俺のまえでは笑顔しか見せないのだ。
半年前、俺の誕生日には海外旅行にいこうと言った薮が倒れたのは一週間前。
大した病気ではないと薮はいつものように笑っていた、みんなもそうかとほっとした。
こんなときでも薮は優しい奴だった。
とことんお人好しだった。
人生の半分以上を過ごした勘というか、以心伝心とでもいうかなんとなくあまり軽々しいとは信じられなかった。
一緒に居過ぎたんだ。
心が通いすぎた。
12月2日、白い箱のような病院でこう笑いあうことが幸せなことなのかあるいはそうでないのか自分でもよく分からなかった。
頭のなかがぐちゃぐちゃになっているんだ。
ラッピングされた箱をきゅっと握り締めて、涙を堪えた。
「なあ、光」
「なに、」
「好きだから、光のこと」
咄嗟に嗚咽を抑えた、泣きそうになったのだ。
なんだか遠くでさようならが聞こえたから。
「薮…、」
「心配すんなよ、すぐ治るし。それに」
「それに?」
来年の今日は海外旅行、絶対行こう。
笑った薮の手はとても冷たかった。
11文字の伝言。
ラッピングを外すとそれはCDだった。
そのCDの歌詞カードの一曲目に蛍光ペンで印がついていた。
11文字の伝言とかかれたその曲に薮はどんな気持ちで印をつけたのだろうか。
CDをかけると、曲が流れる。
「し、あわせに」
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し
あ
わ
せ
に
お
な
り
な
さ
い
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ひかる、
俺のこと
忘れて
幸せになって。
end
きっとsoundhorizonの「11文字の伝言」という曲をしらないひとは訳分かんない小説だったとおもいます…
誕生日おめでとうd(^O^)b