文倉庫1
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「遺伝子は優性と劣性がありそれは人にも―…」
つまらない授業はくそくらえ。
くそくらえーくそくらえー。
窓側の一番後ろというクラス一番の特等席の俺はぼおーっと窓のそとを眺めていた。
体育をやっているクラスはとても暑そうで心のなかでドンマイを送った。胸ポケットからフルーツに名前が似たガムを取り出して、口に放り込んだ。
あと5分。
5分でこのくそつまらない授業が終わる。
机に教師の似顔絵でも描いてやろう。
鼻血も垂らしておこう。鼻毛も生やしておこう。
「有岡、」
顔をあげるとあら先生。ゴツン、と出席簿で頭を叩かれくすくす笑い声がする。
結果的に教師に怒られ、理科室の掃除をさせられた。
あのあと薮に散々からかわれ、雄也からはドンマイをいただいた。
早く帰りたいのに、
塵取りを掃除用具入れにしまいそう愚痴を思う。
「鍵、俺が閉めるから」
後ろから声が聞こえて振り向くと知らない生徒が立っていた。
黒髪の彼は光くらいの身長だろうか、まあとりあえず俺よりかは高い。
「あー、いいの?」
「うん、此所で実験をしてくつもりだから」
「実験?」
「うん、俺化学部だから」
「化学?」
「まあ部員は俺しかいないんだけどね」
凛と笑った彼に鍵を渡すと教室に荷物を取ろうと先を急いだ。
夕陽が傾きかけた窓を見てから走り出した。
「おーい、遅いよばか」
「光?」
「大貴怒られたんだってな、薮から聞いた」
「待っててくれたんだ?」
「うん、あいつらは部活だから行っちゃったけどね」
リュックを背負うと光も机から降りた。
すっかり暗くなった廊下、非常灯がやけに不気味に光る。
「理科室、掃除かあ。面倒臭いな?」
「うん、Gを3匹見つけたよ」
「うげえ…」
廊下から寮をみると食堂が灯を点していた。
もう夕飯だろうか。
「早くしようぜ」
「そうだな」
薄暗い廊下を走り、俺たちは寮を目指した。
夕飯は唐揚げ定食とピーマンの肉詰め定食。
どちらを選ぶかなんて言ったらそれは、
「唐揚げー!!」
だから、体育のときよりも全力疾走で走った。
限定五十食の唐揚げ定食のために。