文倉庫1

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「化学部って、伊野尾だろ?」



唐揚げ定食にありつき、もしゃもしゃ食べている時光が小さく呟いた。
ちなみに光も唐揚げ定食だ、ケチャップ派の俺とは違い光はマヨネーズをかけているが。


「伊野尾?」


「うん、俺とクラス一緒だよ」


「うげえ…頭良いのか」

「俺に失礼だろうが」


「すんません」



癖のある髪の彼の名前は伊野尾というらしい。
何故いままで彼をしらなかったかというときっと国立大学進学クラスだからだろう。
基本就職クラスと国立大学進学クラスは接点がない。
光は薮の親友(薮曰くマイハニー)だから仲が良いが正直国立大学進学クラスの奴等はあまり好きになれない。
光は優しくて良い奴だけれど、他の国立の奴等は人を見下す癖があるのだ。
いや、何もない俺のただの嫉妬かもしれないけれど。
手が届かない存在だから憎らしいんだ、きっとね。



「そいつは、」


「うん」


「光の友達なのか?」


「うーん、この間の体育祭でリレーグループが一緒だったから喋るよ。友達、うーん友達なのかな」



唐揚げをもひもひ食べながら秀才こと光は言う。凡才こと俺はふうんと相槌をうつ。



「おーい」


「あ、薮に雄也」



部活を終えた彼等は光が取っておいた唐揚げ定食を手にしてから席に着いた。
勿論、光の隣りは薮でその目の前に座っている俺の隣りは雄也が座る。


「お疲れ、遅かったな」

「校庭三十周だぜ、有り得なくねえ?」


「うわーまじどんまい」


薮は唐揚げにポン酢をかけて小学生のようにむしゃむしゃ食べる。
雄也はなにもつけずにゆっくり食べる。



「ところで、大貴は伊野尾に何か用なの?」


「…んーん。今日初めて喋ったんだ、だけど名前を知らなかったから」


「そっか」



黒髪の彼は自宅通いなのだろうか、寮でも見たことない。
ラストのケチャップ唐揚げを食べてから白米を掻き込んだ。
光は食べ終わっていたようだ。



「食い終わったら、風呂行こう」


「んーあちいから校舎のほうまで行ってプール入ろうぜ」


「ばか薮、プールじゃ臭いじゃない。お風呂にしようぜ」


「分かった、光」



薮の変容に雄也は笑っている。
風呂は大浴場だ、みんなでいつも入っている。
俺はいつも筋肉のない貧相な身体を馬鹿にされる。
光は細いけど筋肉質だし、薮や雄也は部活柄鍛えられた身体をしている。俺だけ幼児体型。


「大貴、ケチャップ口元についてる」


「ん?おお、ありがとう」


ティッシュで拭ってくれた雄也に御礼を言ってから俺たちは食堂をでた。

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